九州大薬学部の仲矢道雄准教授(薬効安全性学)らの研究グループは、心筋梗塞が起きた際に、コラーゲンなどの結合組織をつくる筋線維芽細胞が死滅した心筋細胞を取り込むことで、心臓の回復を促していることを発見したと発表した。
筋線維芽細胞から分泌されるたんぱく質「MFG―E8」が、死細胞の取り込みを促進することから、このたんぱく質を用いた新たな心筋梗塞治療の可能性につながるとしている。米科学誌(電子版)に6日、掲載された。
筋線維芽細胞は健康な心臓にはみられず、心筋梗塞が起きた際に現れる。研究グループは、心臓の冠動脈を縛って人為的に心筋梗塞を起こしたマウスから、筋線維芽細胞を採取。MFG―E8を分泌して死細胞の取り込みを促進していることを見いだした。
マウスの冠動脈を縛った後、すぐに心臓にMFG―E8を注射したところ、注射しない場合に比べて梗塞部位の広がりを半分程度に抑えることができた。
仲矢准教授は「冠動脈のカテーテル治療に用いられる薬剤溶出性ステントに、MFG―E8を付与するなどの方法で、臨床への応用の可能性が考えられる」としている。
(2016年12月6日 読売新聞)