東京慈恵会医科大学分子疫学研究部浦島充佳教授らと、ドイツ癌研究センター、ハーバード大学、カリフォルニア大学サンフランシスコ校などの他、フィンランド、オーストラリア、ニュージーランドなどの研究機関との国際共同研究により、二重盲検ランダム化プラセボ比較試験に参加した10万人のデータをメタ解析した結果、
①ビタミンD連日摂取により、癌種に関係なく死亡率を低下が12%減少した
②70歳以上では癌死亡率が17%減少し、高齢者で特に有効だった
③癌発症前からビタミンDサプリメントを連日摂取していた場合は13%、発症後でも11%癌死を
予防した
④連日の摂取で有効だったが、月に1回の大量摂取では無効だった
などが明らかにされ、その研究成果が論文に掲載されています。
世界では毎年二千万人近くの人が癌を発症し、約一千万人が癌で死亡していると言われていますが、患者さんの治療費の負担も大きな課題となっています。
そんな中で、ビタミンDは日光にあたるだけでも体内のビタミンD濃度を高めることができる他、1日2000IU(国際単位)の連日摂取でも副作用の報告はなく、比較的安価に摂取することが可能です。
東京慈恵会医科大学分子疫学研究部浦島充佳教授によれば、現段階ではこの研究報告をもってビタミンDサプリメント摂取が有意に癌死を抑制するとは言い切れませんので、今後さらにビタミンD連日摂取の安全性を含めた研究を継続していくとして、すでにその試験も始まっています。
たかがビタミン、されどビタミン!
ビタミンといえば身近すぎて軽視しがちなところもありますが、例えばビタミンB2は、ミトコンドリアを活性化することにより細胞老化を抑制するなど、今まで知られていなかったことも次々に報告されています。
総合ビタミンサプリメント(アサヒのサプリ「ディアナチュラ」など)や、総合ビタミン医薬部外品(ポポンSなど)の摂取は、安価でもあり、私たちの健康を維持していくうえで、有用かも知れません。
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ビタミンD摂取と癌死亡率低下について!
やっぱりコーヒーは偉かった!
2023年のはじめ、「くすりの話」の「偉いシリーズ」に「コーヒー」も仲間入りしました。
この時には、主にコーヒーに含まれているポリフェノールのひとつ「クロロゲン酸」の効果について、国立がん研究センター予防研究グループやお茶で有名な伊藤園の研究を中心にご紹介させていただきました。
今回は、国立大学法人筑波大学とダイドードリンコ株式会社の共同研究報告についてご紹介させていただきます。
以前には、クロロゲン酸が体内で「フェルラ酸」という物質に代謝され、認知症の予防・改善に有用である可能性をお伝えさせて頂きましたが、この度はマウスを用いた研究から、コーヒー由来成分の「トリゴネリン」が認知機能改善効果を発揮する可能性についてお伝えさせていただきます。
近年、加齢に伴う認知機能低下を改善する天然物質の探索は、健康的な老化を実現させるために重要な課題となっていますが、自然発症老化促進モデルマウスを用いた研究により、コーヒーの他、大根などにも含まれている「トリゴネリン」が、空間学習記憶能を有意に改善し、そのメカニズムとして神経系の発達やミトコンドリア機能、神経伝達物質の放出に関連するシグナルの活性化によるものであるということが発見されました。
さらには、NF-κBの活性化をネガティブに調節して神経炎症を抑制することや、たんぱく質定量解析により、海馬領域において炎症性サイトカインTNFα、IL-6が有意に減少し、神経伝達物質のドパミン、ノルアドレナリン、セロトニンを増加させていることも確認されました。
以上のことから、「トリゴネリン」は、加齢に伴う空間学習記憶(自分の居場所の認識)障害の予防改善に有用である可能性が示唆されました。
この度の研究報告から、「やっぱりコーヒーは偉かった」と思わせていただきました。
但し、コーヒーにはカフェインが含まれていますので飲みすぎには注意をしなければなりません。
多くても1日5杯までを目安にされますことを念のため申し伝えます。
補完代替医療について正しく理解するために!
補完代替医療、それは西洋医学を教育する医学部では未だに講義すらされていない分野であることから、必要に応じて推奨されたり、肯定される医師は少ないのが現状です。
国内では、20年以上前から一部の医師が患者さんに補完代替医療を推奨することで良い結果報告がポツポツと出始め、その後徐々に研究の対象として取り組まれてくるようになってきました。
そして、やっと1990年に代替医療研究会が発足し、2000年には補完代替医療学会の設立へと発展しています。代替医療から補完代替医療という名称に変更されたのは、「代替医療」という名称が、あたかも西洋医学にとって代わる医療と誤解を招くことが多かったという経緯があります。
そこで、西洋医学を否定するものではなく、また西洋医学にとって代わる医療という意味でもない、「補完代替医療」という名称に変更されました。
国として本格的に補完代替医療の議論を始めたのは2012年の厚生労働省が開催した「統合医療のあり方に関する検討会」においてです。
このころからやっと本格的に補完代替医療、統合医療という分野にも国として検討が始まりました。
それでも補完代替医療の分野の研究は、海外に比べても50年以上遅れていると指摘されているように、国内の現状としてはまだ補完代替医療を完全に否定する医師も多く見受けられ、やっと否定はしないが肯定もしないという立場の医師が増え始めてきたという段階です。
さて、それではどうして補完代替医療が多くの医師に受け入れされにくいのでしょうか。
例えばサプリメントを例にあげて考えてみます。サプリメント(健康食品)は、当然ながら「健康食品」に分類されます。「いわゆる健康食品」という表現もされるように、「食品」というくくりの中で、信頼できる食品とそうでない食品がすべて同じ位置づけされていることもあります。
その中で補完代替医療に詳しい島根大学医学部付属病院臨床研究センター教授の大野智氏は、補完代替医療の問題点を大きく3つ挙げています。
(!)健康被害(品質の悪い粗悪な原料を使用して製造しているなど)
(2)経済被害(足もとをみてぼったくりのような高額請求をする悪徳商法)
(3)機会損失(西洋医学を否定するかのように通常医療を妨げる)
です。
結局は、何が妨げの原因になっているかといえば、販売業者の専門知識(正しい情報の理解と伝達)の有無やモラルの欠如などです。
そこで販売業者を選ぶためのポイントは、上記の点をしっかりと把握し、専門知識をもったスタッフ、または顧問医師がいること、偏りなく正しい情報を発信し、自社が販売する商品だけを売りつけるようなことがないなどのところを選ぶべきかと思います。
最近では、一番信頼性が高い研究として位置付けられているランダム化比較試験でも、健康食品や鍼灸、マッサージといった研究報告件数は年々増加しています。
(参考;朝日新聞 デジタルより抜粋)
今後ますます研究が重ねられ、医師をはじめ、一般の方も補完代替医療を正しく理解されるようになり、いわゆる悪徳業者が淘汰され、国内においても補完代替医療があたりまえに受け入れられるときが来るのを期待します。
なお、厚生労働省の統合医療情報発信サイト「http://www.ejim.ncgg.go.jp/」
も参考になるかと思いますので併せてお伝え申し上げます。
先発医薬品の使用で自己負担額が増える?!~後発医薬品(ジェネリック医薬品)の供給は大丈夫?~
これまでも、患者さんの希望で後発医薬品(ジェネリック医薬品)のある先発医薬品(いわゆる長期収載品)の処方箋医薬品を受け取る場合に、後発医薬品との差額の一部を保険外の「選定療養」とすることが何度となく議論されてきました。
「選定療養」とは、社会保険に加入している患者さんが、追加費用を自身で負担することにより、保険適用外の治療を、保険適用の治療と併せて受けることができるようにすることです。
選定療養扱いになると、1割や3割といった負担割合ではなく、その一部が保険外の扱いとなり自己負担が増える仕組みです。
厚生労働省では、昨年12月から後発医薬品のある先発医薬品の「選定療養」について本格的な議論を始めており、詳細については今後明らかになってくるものと思われます。
現時点では、今回の制度の対象は後発医薬品の上市後5年以上経過したもの、または後発医薬品の置換率が50%以上となったものが対象で、後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の3が保険給付の対象となる方向で進められています。(正式決定は4月の予定です)
ということは、価格差の4分の1については、0割負担の患者さんでも自己負担が発生し、1割負担の患者さんも3割負担の患者さんも同額の負担増になります。
後発医薬品の使用は約20年間も国の施策として後押しされていますので、そろそろ医療費抑制のひとつの政策として実施に踏み切っても良いように思う反面、最近の後発医薬品不足はかなり深刻な状況であることから、今はその時期ではないようにも感じます。
今回の変更で、先発医薬品を好んで使用していた患者さんの一定数は後発医薬品に変更すると思われますので、ますます供給困難な状況を作り出し、混乱を招くことが容易に予想できます。
この度議論されている長期収載品の選定療養扱いは10月スタートを予定している様子ですが、医薬品の安定供給はまず困難な状況である中、国としてどのように安定供給への対策を考えているのか何ら示されていません。
個人的には、もし後発医薬品のある先発医薬品の「選定療養」を実施されるようなら、国民の不安を払拭するためにも、国としてきちんと説明をしていただき、誰もが納得できるわかりやすい制度を作っていただきたいと思うと同時に、製薬会社各社においても、医薬品の製造という社会的責任を重く受け止め、1日も早く医薬品を安定的に供給できるように努めていただきたく思います。
アスパラガス抽出物~認知症患者に対する新たな知見~
アスパラガス抽出物は、これまでにヒートショックプロテイン(HSP)70を発現誘導することにより、抗ストレス、睡眠の質改善、認知機能改善作用などが報告されています。
HSP70と病気との関係はよく知られており、特に「うつ症状」の改善などの精神疾患や、睡眠の質の改善などに対しても注目されています。
今までにも、アスパラガス抽出物を用いたヒト試験においても、抗ストレス作用の他、睡眠の質改善作用などが報告されています。
さてこの度、日本医療大学認知症研究所の銭本隆之らの無作為化二重盲検クロスオーバー試験で、軽度~中等度認知症患者の認知機能や精神症状の改善などが見られたことを、Evidence-based Complementary and Alternative Medicine 2023に掲載されました。
アスパラガス抽出物の脳機能に関する報告はこれまで学会で良い結果報告を発表されてまいりましたが、さらに一歩進んだ研究報告と言えます。
今後の研究成果に期待されるところです。
手軽な運動「つま先立ち」
健康のために運動は必要!と分かっていてもなかなかできないことも多いですよね。寒い時季は外に出たり体を動かすのもためらわれて、なおさら運動不足になりがちです。
今回は、そんな時季でも手軽に短時間にできる運動「つま先立ち」をご紹介します。
★ナゼつま先立ちが健康に良いの?
つま先立ちが健康に良いと言われる一番の理由は、ふくらはぎの筋肉を使うことで、主に下半身の血流を活発にすることです。
ふくらはぎは第二の心臓とも呼ばれ、書籍が販売されるなどのふくらはぎ健康ブームもありました。
足先から血液を心臓に戻すには重力に逆らって血液を流す力が必要となります。
静脈には血液の逆流を防ぐ静脈弁があるため、逆流することは少ないですが、血液を流す力が少ないと、血液が心臓に戻るのに時間がかかり、血流が滞る原因になってしまいます。
血液が血管に留まる時間が長くなると、静脈の中で固まりやすくなり静脈の形が変わってしまう下肢静脈瘤の要因となってしまいます。
ふくらはぎを使って血流を改善することは、冷え性だけでなく全身の健康にも良い影響があります。
★ちょっとした隙間時間にやってみましょう!
つま先立ちはその名の通り、つま先で立つだけですので、ちょっとした空き時間や、何かをしながら、手軽に行うことができます。
(1) 壁や椅子などに両手を付けて支えにして立つ
(2) 10秒間両足のかかとを上げて、ゆっくりかかとを下ろす
(1)と(2)を5回ほど繰り返すというのが一つの目安ですが、その人の体力に応じて
かかとを上げる時間を延ばしたり短くしたり、回数を変えても構いません。
安全な状況であれば、電車で立っている時などの隙間時間に行うこともできます。
かかとを上げる時は、親指の付け根付近で立つことを意識して足の指はまっすぐになるように気を付けましょう。足の指が丸まってしまうと筋肉をしっかり使うことができないので、指はまっすぐ床に着いた状態でかかとを上げてください。ただし、転倒しないように無理のない範囲で行ってください。
また、椅子に座ったままでも、同じようにかかとを上げ下げすることで、ふくらはぎの筋肉を使うことができます。
★腸内環境改善や生活習慣病予防にも
つま先立ちをすると、身体のバランスを取るため、ふくらはぎだけでなく足裏や太もも、お腹周りの筋肉も使うことができます。
筋力が上がることで、要介護のリスクが高くなるロコモティブシンドローム(筋力の低下で日常動作に支障をきたす運動器症候群)の予防や、腹部に力が入ることで腸の働きが活発になり腸内環境の改善にもつながります。
血流が良くなることで、動脈硬化や高血圧などの生活習慣病のリスクを下げることにもつながります。
手軽にできる運動の一つとして、日ごろから取り組んでみてはいかがでしょうか。
アルコール手指消毒の落とし穴!特に小児に気をつけたいこの時季の感染症!
最近になってようやく新型コロナウィルス感染症の感染予防対策としてアルコール手指消毒やマスクの着用なども日常に定着し、感染拡大が落ち着いているようにも思われます。
しかし、ここで油断は禁物です。
アルコール手指消毒の定着は良いことではありますが、それに伴って、通常の手洗いがおろそかになる傾向が増えているという報告もあります。
ここが大きな落とし穴です。即ち、「アルコールで消毒しているから大丈夫」と過信するあまりに、通常の手洗いがおろそかになったり、大型店舗の入り口に設置されている消毒の様子を見ていると、「ちょっとアルコールで手を湿らせる程度」の方も多く、それで「消毒できた」と自己満足されている方が多いように見受けられます。
アルコールでの手指消毒は、十分な液量を使用して、ある一定の時間を擦り合わせるという、正しい方法で行わなければ十分にウイルスをやっつけることはできません。
さらに、この冬の時季は、そもそもアルコールでは十分に消毒出来ないウイルス感染にも注意が必要です。
その代表的なウイルス感染は、感染性胃腸炎とも呼ばれているノロウイルスです。
ウイルスの中には、アルコール消毒が有効なウイルスと、無効のウイルスが存在しますが、ノロウイルスは通常のアルコール消毒では消毒効果が期待できないウイルスのひとつです。
ノロウイルスは、乳幼児から高齢者まで幅広く感染し、激しい嘔吐や腹痛を伴いますが、嘔吐物の処理などの消毒には次亜塩素酸ナトリウムを使用します。
アルコール消毒で効果を発揮しないウイルスといえば、その他にも特に乳幼児に急性胃腸炎を引き起こすロタウイルスがあります。
ロタウイルスは非常に感染力が強く、重症化すれば入院することもあり、稀に合併症を引き起こすこともあります。
このように通常のアルコールでは十分に消毒出来ないウイルスがあることや、正しくアルコール消毒が出来ていない場合もあることなどを考慮して、やはり基本に立ち戻って「石鹸を使用して、流水でしっかりと手を洗う」ことが最も大切だということを、再認識することも大切だと思います。
なお、最近では通常の消毒用アルコールを酸性にした「酸性アルコール消毒液」が発売されており、これであればノロウイルスやロタウイルスの消毒にも有効ですので、念のため申し添えます。
麹菌発酵 アグリコン型大豆イソフラボン~男性更年期など、男性の健康維持にも有用!~
大豆イソフラボンと言えば、女性向けのサプリメントと思われがちで、特に「麹菌発酵アグリコン型大豆イソフラボン」(ドクターアグリマックス)は、女性更年期障害緩和作用をはじめ、受精卵着床サポートなどの不妊症治療の一環として医師も補完代替医療の分野で使用されているサプリメントです。
そのドクターアグリマックスに、男性に対しても様々な有用作用が確認されていますので、お伝えさせて頂きます。
今までにもドクターアグリマックスの男性対する効果は、ヒト試験における「運動精子濃度改善作用」が知られていました。
最近では男性更年期に対する効果についても実験結果が報告されています。
男性更年期は、加齢に伴い男性ホルモンのテストステロンの低下によって発症し、女性更年期と同様に様々な症状が現れてまいりますが、特に40~50歳代の男性に男性更年期症状が多く見られ、その原因は加齢だけでなく、仕事などによるストレスや不規則な生活習慣などの影響により発症しやすいと言われています。
さて、テストステロンから、5αリダクターゼという酵素によって変換されるDHT(ジヒドロテストステロン)は、活性型男性ホルモンとも呼ばれており、前立腺肥大症や毛髪の成長を妨げる作用を有することが知られていますので、加齢に伴う男性の悩みを解消するためには、5αリダクターゼの作用を抑制することも大切です。
ドクターアグリマックスは、5αリダクターゼの作用を抑制し、テストステロンの低下を抑制することにより男性更年期症状を緩和させることが期待できるとともに、ドクターアグリマックスの代謝産物のひとつ「エクオール」がDHTと結合してその働きを阻害することなどが研究で明らかにされていますので、ドクターアグリマックスは、女性だけでなく、男性の健康維持にも有用なサプリメントであると言えそうです。
やっぱり魚は偉かった!
かなり以前になりますが、「くすりの話」で「大豆は偉い」、「乳酸菌は偉い」、「魚は偉い」と「偉い」シリーズとして皆様にご紹介し、大豆と乳酸菌については「やっぱり偉かった」シリーズとしてご紹介しています。
この度は「やっぱり偉かった」シリーズに「魚」も仲間入りしましたのでご紹介させていただきます。
まずは、以前にご紹介している「魚は偉い!」について少しおさらいしておきます。
魚の何が偉いのか?
それはタンパク質などの栄養成分の他に、魚の油に含まれている「DHA」や「EPA」が身体によい作用が報告されているからです。
これらは血液サラサラ効果や中性脂肪低下作用、心血管系疾患の罹患率や死亡率の低下、不整脈の抑制、インスリン分泌増強およびインスリン感受性増強作用、抗ストレス作用などの他、認知機能改善作用、抗ウイルス作用などを有する報告があることをお伝えいたしました。
中でも中性脂肪低下作用については医薬品として医師が処方している実績もありますし、認知機能予防・改善作用についても研究が重ねられています。
さてこの度、DHAやEPAに代表されるω3(オメガスリー)脂肪酸が、肺機能低下や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防に役立つ可能性が報告されました。
肺機能低下や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症には炎症が関与していることはすでに知られており、ω3脂肪酸は抗炎症作用を有することも知られています。
そこで、そこで米国コーネル大学の研究グループがω3脂肪酸の血中濃度と肺機能、気流閉塞との関連性を調べ、その研究成果が論文に掲載されました。
研究結果では、血中ω3濃度が高いと肺機能低下が抑制され、その効果はDHAが最も大きいこと、脂肪酸摂取量に占めるDHAの割合が増加すると肺機能低下が抑制され、気流閉塞の発生率が低下することがわかりました。
このように魚に含まれる栄養素の摂取により、様々な疾患に対して良い作用をもたらす可能性が次々と報告されていますので、魚もめでたく「やっぱり偉かった」シリーズの仲間入りに認定したいと思います。
麹菌発酵大豆イソフラボン Dr.アグリマックス 炎症性腸疾患にも有用か?
麹菌発酵大豆イソフラボンであるダイゼインリッチアグリコン型大豆イソフラボンは、医療機関向けサプリメントとして「Dr.AglyMax」の商品名で販売されています。
これまでにも「Dr.AglyMax」は、一般的な大豆イソフラボンの作用でよく知られている更年期障害によるホットフラッシュや不眠の改善、骨密度の改善作用などの他にも、LDL-コレステロール低下作用、中性脂肪低下作用、インスリン感受性改善作用や、さらには受精卵着床サポート作用などによる不妊治療に有用であることを示唆する報告があり、医師からも良い評価をいただている商品のひとつです。
この度、いくつかの試験によって、「Dr.AglyMax」の炎症性腸疾患に対する効果を示唆する試験結果が新たに報告されましたので、その一部をご紹介させて頂きます。
ひとつは、マウスに「Dr.AglyMax」と生理食塩水を1週間投与した後に、デキストラン硫酸ナトリウムを投与し大腸炎を誘発させ、「Dr.AglyMax」投与群と生理食塩水投与群で大腸組織を比較したところ、「Dr.AglyMax」投与群は対象群に比べて柔毛と外皮の損傷はなく、炎症も確認されなかったことを報告しています。
また、TLR(Tool様受容体)2,および4を介して、炎症性サイトカインIL-6、IL-8の産生抑制作用、IL-10の分泌増加による炎症性サイトカイン産生抑制作用、抗原提示細胞(APC)による炎症性サイトカインの過剰産生抑制作用など、炎症性腸疾患の改善が期待できる結果が確認されました。
先生方もご存知のとおり、炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎やクローン病など国が定めた難病法の中で「指定難病」とされており、罹患者は年々増加傾向にありますが、治療方法は未だに確立されていない疾患です。
従来の治療に加えて、補完代替医療の一環として併用することにより腸内の炎症を抑制し、潰瘍性大腸炎やクローン病などの症状が少しでも改善できれば患者さんにとってはありがたいことと感じます。