糖尿病患者さんの中で、血糖値を自己測定されている方は、少なからず穿刺による痛みを伴うほか、医療廃棄物としての処理や測定に伴う費用など負担が大きいものでした。
現在、それらのデメリットを軽減するため、非侵襲性血糖センサーの開発が進んでおり、手のひらサイズまで小型に成功し、実用化が間近になっているようです。
開発に取り組んでいるのは大阪市にあるベンチャー企業で、中赤外線レーザーを指先に照射して毛細血管中の血糖値を測定する仕組みで、センサー部分に指を5秒間あてるだけで血糖値が測定できるとのことです。
健常者を対象とした試験では、血糖自己測定機器による値と相関性が高く、国際標準化機構(ISO)が求める計測精度を満たしており、現在は量産試作を行っている段階だと言います。
今までも非侵襲性血糖測定器の開発は進められていましたが、中赤外線レーザーを使用することにより、血中成分と糖の区別がつきにくいという課題が克服され、一気に開発が進んでいきました。
使用に伴う費用については、現在血糖自己測定器を使用している患者の自己負担額と同程度ではありますが、今後のコストダウンに向けても研究を重ねています。
専用アプリをインストールしたスマートフォンの画面にも表示できるようになり、医師が瞬時にデータを確認できるようになることや、この中赤外線レーザーの波長を変更すれば、理論的に血中中性脂肪値やコレステロール値、アルコール濃度測定などに応用が可能であることから、手軽に使用できてコストが下がれば、さらに健康管理に役立つ機器へと期待が高まってまいります。
今後、臨床試験を積み重ね国の承認を受けて販売を目指しているということですが、1日も早い実用化が待たれます。
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血糖自己測定器を使用されている方に朗報!
いわゆる「睡眠薬」のお話
睡眠薬と聞けば、依存性が高いお薬で使用を避けたいと思われる方も多いかも知れませんが、それは古くから使用されている「ベンゾジアゼピン系」、または「非ベンゾジアゼピン系」に分類されている一般的な睡眠薬をイメージされるからだと思います。
実は睡眠薬には、そのメカニズムの違いから「①脳機能を低下させるお薬」と「②自然な眠気を強くするお薬」の二つに分類することができます。
脳機能を低下させるお薬は、少し乱暴な言い方になりますが、激しい運動をしたときや、風邪をひいて免疫力が低下した時など、「体が疲れきって眠くなる」状態のイメージです。
覚醒に働いている神経活動を抑えて、要は強制的に眠らせてしまうお薬です。
これだけ聞くと怖いイメージがあるかも知れませんが、最近のお薬は昔のお薬と違って、依存性も低く、安全な薬ですので安心してご使用していただいて大丈夫です。
脳機能を低下させる睡眠薬に対して、例えばロゼレム(一般名;ラメルテオン)という、体内時計のリズムを整えている「メラトニン」というホルモンに働きかけ、睡眠を促すお薬があります。
体内時計のお話もこの「くすりの話」で何度かさせて頂いていますが、夜更かしや寝る前のパソコン、ゲーム、明るい部屋での睡眠などで体内時計にずれが生じて質の良い睡眠が十分に確保できないことが多くなる傾向が問題になっています。
ロゼレム(一般名;ラメルテオン)は、その体内時計のリズムをリセットする方向に働きかけ、自然な睡眠を促すお薬ですので依存性などの心配もありません。
ところで、食事をした後に眠気を催すことはよく知られていますが、それはどうしてかご存知でしょうか。食事をすることによって血糖値が上昇するからと答える方が多いと思いますが、血糖値が上昇することによりオレキシンという物質の活動が低下することによって眠くなるのです。
オレキシンは食欲中枢から発見された物質ですが、動物は空腹になれば「餌」を探す行動をとるため、常に敵と隣り合わせで意識を覚醒しておくことが必要で、そのためにオレキシン作動性ニューロンという神経細胞が活発に働くことで覚醒しています。
一方、満腹になって血糖値が上昇すれば、オレキシンの活動が低下し眠気を催してくるのですが、その作用を利用してデエビゴ(一般名;レンボレキサント)というお薬も発売されています。
デエビゴは、オレキシン受容体拮抗薬と呼ばれ、オレキシンの働きをブロックすることで自然な眠気を誘導するお薬です。
ロゼレムもデエビゴも自然な眠気を誘導するタイプの新しいお薬ですので、さすがに入眠障害に対しては効果が期待しづらいと言われていますが、中途覚醒や早朝覚醒、熟眠障害などには有効です。
ロゼレムとデエビゴは、作用する場所が異なりますので、場合によっては併用も可能です。
自然な眠気を強くするタイプのお薬は、体内時計のずれが原因と考えられる睡眠障害が増えている現在社会において、このタイプのお薬の開発が進み、今後はこのタイプの睡眠薬が主流になってくる時代がやってくるかも知れません。
ビタミンDのがん免疫を促進する意外なメカニズム
以前のくすりの話で、「脳-腸相関」についての研究が本格的にすすみ始め腸内細菌のかかわりについても少しずつ明らかになりつつあることをお伝えしました。
今月号は、それにも関連した話題にはなりますが、「ビタミンDのがん免疫を促進する意外なメカニズム」についてお伝えします。
ビタミンDは、骨代謝にかかわるビタミンとしてよく知られていますが、日光を浴びることによって体内で合成することもできるビタミンであることから、あまり注目されていませんでした。
しかし、まだまだエビデンスに乏しいものもありますが、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症の予防改善の可能性の他、免疫力を高める作用が知られています。
免疫力を高める作用については、核内受容体に結合して様々な分子の転写を促進することによるものと考えられていましたが、腸内上皮細胞に作用しBacterioides fragilisという細菌が腸内で増える結果、がん免疫が増強されることが科学雑誌「Science」(4月26日号)で報告されました。
ビタミンDで上皮が刺激されることで起こる腸内細菌叢の変化を調べたところ、Bacterioides fragilis のみが増加していることがわかり、Bacterioides fragilisを正常マウスに移植するとがん抑制が誘導され、この効果はビタミンD欠損食で消失することを確認しています。
人間のデータベースからビタミンD受容体の感受性が高い患者さんはがんの生存率が高いことや、ビタミンD濃度の低い患者さんはがん発生率が高いなどが知られていますが、Bacterioides fragilisの関与についてはまだ明らかにされていません。
最近、東京慈恵会医科大学の研究で、ビタミンDサプリメントの摂取と癌死亡率低下の可能性について発表されていまます。
統合医療を実践する医師の中でも、免疫力を高めることが期待できる健康食品とともに、ビタミンDなどを含む総合ビタミンの摂取を推奨しているグループもあります。
ビタミンCの抗酸化作用などを含めていままでにもよく知られている作用に加えて、いままで知られていなかった様々な作用が発見されています。
例えば、ビタミンB2は、ミトコンドリア活性作用が知られるようになりました。
ミトコンドリア活性作用で期待できる作用として、認知症やパーキンソン病の予防・改善作用、がん細胞のアポトーシス(自滅)誘導作用などの他、実に様々な作用が期待できます。
がん補完代替医療を実践されている方は、コスト的にも負担が少ないことから、可能であれば総合ビタミンサプリメント、または総合ビタミン配合の医薬部外品の摂取も併せて考慮しても良いかも知れません。
「腸内細菌と病気の予防と治療」の関係~今後の研究の進展に期待!~
脳と腸は常に情報を交換しあってお互い影響を及ぼすことが徐々に解明され、やっと最近になって「脳-腸相関」についての研究が本格的にすすみ始めています。
その中で、腸内細菌のかかわりについても少しずつ明らかになりつつあり、どの腸内細菌がどのような疾患にかかわっているかというところまでわかりはじめてまいりました。
しかし、まだまだわかっていないことの方が多いというのが現況です。
乳酸菌が免疫力を高める作用が期待できることはすでによく知られていますが、それ以外にも、睡眠や抗アレルギー作用に乳酸菌入り飲料やヨーグルトが発売されていることからもわかるように腸内細菌は様々な疾患とかかわりをもっています。
そもそも脳腸相関における腸内細菌のかかわりが世界でも注目されるようになったのは、腸内細菌を持たない無菌マウスを用いた研究報告が発表されてからです。
無菌マウスは腸内細菌を持つ通常マウスに比べ、ストレスに対して過敏であること、脳の神経系を成長させるための因子が少ないことなどが分かり、無菌マウスに通常の腸内細菌を移植すると多動や不安行動が正常化するという報告などから、腸内細菌はストレスの感じ方や脳の神経系の発達・成長、そして行動に関わる存在であることが示唆されています。
さらに最近の研究で、がん免疫治療薬(オプジーボなど)と腸内細菌とのかかわりについても知られてきました。
がん免疫療法は、手術・放射線・抗がん剤治療に続く「第4のがん治療法」と言われており、抗がん剤や分子標的薬などと比べても、がん免疫治療薬の効果が出て3年間生きられると、5年、10年と再発が抑えられる可能性が高いと言われています。
その中で、腸内細菌叢の環境を整えることでがん免疫治療薬の効果を高める可能性について昭和大学医学部で研究が進められています。
昭和大学医学部で研究されるようになったきっかけは、「腸内細菌の違いによって、がん免疫治療薬の効果が左右される」という、マウスを使った研究報告でした。
同じ種類と同じ週齢のマウスであるのに、飼育先の会社によってがん免疫治療薬の効果が違うことに気づいた海外の研究チームがその原因を探ったところ、餌などの飼育環境の違いによって治療薬の効果を左右していることや、無菌マウスにがん免疫治療薬を与えても治療効果が現れないことがわかりました。
これをきかっけにヒトでも検証を重ねた結果、がん免疫治療薬の治療効果のなかった患者の腸内細菌に比べて、治療効果のあった患者の腸内細菌は多様性に富んでいることや、治療前に抗生物質を服用している方はがん免疫治療薬の効果が現れにくいことなどがわかりました。
さらに、昭和大学の研究チームデータ分析から、オプジーボの効果があった患者さんの腸内にビフィズス菌が多いことや、腸内細菌の多様性があったこともわかっています。
まだまだ腸内細菌と病気についての解明は研究途上にありますが、今後ますます解明されていくことを期待しています。
腸内細菌と病気についての詳細がまだ明らかになっていない現時点では、日常的に乳酸菌やビフィズス菌入りの飲料やヨーグルトの積極的な摂取、およびオリゴ糖や食物繊維の積極的な摂取などの他、例えばエンテロコッカス・フェカリス菌含有サプリメントの積極的な摂取なども補完代替医療の立場から有用かも知れません。
先発医薬品の自己負担額が増える?!
10月より、先発医薬品が処方された場合は、特別な理由を除いて、一部保険給付の対象から除外され、自己負担額が増えます。
この度の調剤報酬改定により、後発医薬品のある先発医薬品(いわゆる長期収載品)が処方された場合に、後発医薬品との差額の一部を保険外適応として「選定療養」とすることが決定しました。
「選定療養」とは、健康保険に加入している患者さんが、追加費用を自己負担することにより、保険適用外の治療を、保険適用の治療と併せて受けることができるようにすることです。
選定療養扱いになると、1割や3割といった負担割合ではなく、その一部が保険外の扱いとなって自己負担が増える仕組みです。
この度の調剤報酬改定では、後発医薬品の上市後5年以上経過した長期収載品、または後発医薬品置換率が50%以上となった収載品が対象で、後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の1が自己負担となります。
従って、仮に先発医薬品の価格が200円で、後発医薬品の価格が100円とした場合、その差額の100円の4分の1の25円を自己負担することになります。
但し、医師が医療上必要と認めた場合、あるいは医薬品供給困難な場合などで、薬局側が後発医薬品の準備が整わない場合などは引き続き全額保険給付の対象となります。
今回の改定に伴い、医師が医療上必要と認めたことがわかるように、処方箋の形式も変更されることになりました。
なお、施行されるのは、本年10月1日からです。
生きる希望の光 ~ 補完代替医療の発展を期待して ~
補完代替医療は、国内では一般の方をはじめ、医師や薬剤師などの専門分野の方々にも、まだまだなじみの少ない言葉だと思われますが、欧米諸国では様々な研究が積み重ねられ、広く受け入れられている分野で、欧米諸国に比べても日本は半世紀以上遅れていると言われています。
補完代替医療の定義は、日本補完代替医療学会では「現代西洋医学領域において、科学的未検証および臨床未応用の医学・医療体系の総称」で、「通常の医学校では講義されていない医学分野で、通常の病院では実践していない医学・医療のこと」だと定義しています。
「通常の医学校では講義されていない医学・医療」なので、当然ながら通常の教育を受けて国家試験を合格した医師にとっては「わからないから推奨できない」というのがむしろ当然のことかも知れません。
一方で、「補完代替医療」の分野は、西洋医学ではどうすることもできない個々の症例に対して、有用な場合もあることを正しく理解することも大切で、一部の研究者により研究が積み重ねられている分野であることも忘れてはなりません。
最近では、免疫学の進歩にともなって、免疫力を高めるサプリメントなどによる、がん患者さんに対する「補完代替医療」は以前より受け入れられるようになり、がん患者さんの延命や、抗がん剤副作用軽減、痛みの緩和などのQOLの向上を含めると、治療の補助として欠かせない分野と感じます。
「補完代替医療」の中でも、国内で早くから認められるようになったのは「漢方」で、今では「東洋医学」という位置づけで「漢方薬」として医薬品に分類されています。
漢方薬は、何千年という歴史から積み重ねられてきた経験から生まれた薬で、今まで知られていなかった作用機序や新たな疾患に対する有効性なども、やっと最近になってわかってきたという例もあります。
認知症患者さんの一部の症状緩和にもよく使用される「抑(よく)肝散(かんさん)」もその一つです。
最近の研究でパーキンソン病患者さんの運動障害に有効であるという論文が発表されており、韓国では抑肝散に少し改良を加えて臨床研究が進められているようです。
このようなことから感じることは、「エビデンスがないから」という理由で否定したり、「治る・治らない」の二つに一つという考え方をするよりも、通常の医学ではもうどうすることもできないという患者さんのどん底の気持ちから生きる希望の光となるような、患者さんの心の充実や痛みの緩和、副作用軽減などのQOLの向上などの幅広い立場の医療を実現していくことも大切だと思います
。 必要に応じて「補完代替医療」を安心して実践していけるように、補完代替医療分野の研究者は、しっかりと研究を積み重ねる努力を続けること、また「補完代替医療」を取り入れようとされる方は、どのような研究がされているのか、どのような実績があるかなどをご自身で納得できるまで確認することも大切だと思います。
今後、ますますの「補完代替医療」の発展に期待したいと思います。
これからの時季、気をつけたい「光線過敏症」
光線過敏症とは、薬剤や食品、化学物質、遺伝などが原因で、日光にあたることが引き金となって引き起こす皮膚症状のことです。
日光による皮膚症状で真っ先に思い浮かぶのが「日焼け」だと思いますが、日焼けはある程度強い日差しを一定時間浴びると誰にでも生じるものですが、通常では反応が起きないような弱い紫外線でも症状が現れるのが光線過敏症です。
特に肌の露出が多くなるこの時季は、薬剤性光線過敏症を引き起こすことが知られているお薬の使用に注意が必要です。
薬剤性光線過敏症の症状は、強いかゆみを伴う紅斑、丘疹、色素沈着やびらんなどの皮膚症状などですが、比較的症状が重いのも特徴で、ステロイド外用剤で効果が得られないこともあり、内服治療が必要となったり、治療期間が長くなることもあります。
さらには、時間の経過とともに皮疹の範囲が周辺に広がっていくこともある厄介者です。
よく知られている貼付剤の成分で「ケトプロフェン」や「ジクロフェナクナトリウム」などがありますが、最近ではこれらの成分が含まれている貼付剤や塗り薬が市販されていますので、痛み止めの貼り薬や塗り薬を購入される場合はご注意ください。
外用薬以外でも内服薬で「光線過敏症」を引き起こす可能性のあるものもあります。
薬剤性光線過敏症が疑われる場合は、直ちにその薬剤を中止し、患部を遮光したうえで、速やかに医療機関に受診してください。症状が強い場合は皮膚科への受診をお勧めします。
また、薬剤性光線過敏症を引き起こしやすい薬剤を使用される場合は、まずは衣類やサポーターなどで物理的に遮光することが大切で、その他にPA+++(又は、++++)と記載されたサンスクリーン剤の中で、紫外線吸収剤(オキシベンゾンやオクトクリレン)が配合されていないものを使用して光を防御することも大切です。
サンスクリーン剤の含有成分がわからない場合は、「ノンケミカル」と記載されているものを選べば大丈夫です。
紫外線が強くなってくるこの時季、日焼けだけでなく薬剤性光線過敏症にも十分に注意してくださいね。
ビタミンDサプリメントの摂取で癌死亡率を低下できるかも知れない?!
ビタミンDの有用性については、2020年の秋に「ホンマでっか?!ビタミンDのお話」の中で、ビタミンDのあまり知られていない作用について紹介させていただきました。
この度は、その第二弾として、昨年5月の東京慈恵会医科大学の報道発表資料をもとに「ビタミンDサプリメントの摂取と癌死亡率低下の可能性」についてご紹介させていただきます。
この度の報告は、東京慈恵会医科大学分子疫学研究部浦島充佳教授らと、ドイツ癌研究センター、ハーバード大学、カリフォルニア大学サンフランシスコ校などの他、フィンランド、オーストラリア、ニュージーランドなどの研究機関との国際共同研究による10万人のデータを解析して報告されたものです。
世界では毎年二千万人近くが癌を発症し、約一千万人が癌で死亡していると言われています。
そんな中で、ビタミンDは日光にあたるだけでも体内のビタミンD濃度を高めることができる他、1日2000IU(国際単位)の連日摂取でも副作用の報告はないことから、ビタミンDサプリメントの摂取で癌死亡率を低下できるとすればありがたいことだと思います。
この研究結果によれば、
(1)ビタミンD連日摂取により、癌種に関係なく死亡率を低下が12%減少した
(2)70歳以上では癌死亡率が17%減少し、高齢者で特に有効だった
(3)癌発症前からビタミンDサプリメントを連日摂取していた場合は13%、発症後でも11%癌死を予防した
(4)連日の摂取で有効だったが、月に1回の大量摂取では無効だった
などが報告されています。
東京慈恵会医科大学分子疫学研究部浦島充佳教授によれば、現段階ではこの研究報告をもってビタミンDサプリメント摂取が有意に癌死を抑制するとは言い切れませんので、今後さらにビタミンDの連日摂取の安全性を含めた研究を継続していくとしています。
ビタミンDサプリメントの摂取は、比較的安価でもありますので、健康維持の一環として摂取することも良いかも知れません。
但し、ビタミンDはご高齢者に多い骨粗鬆症に対するお薬として処方されている可能性がありますので、ビタミンDのお薬を処方されている方は、ビタミンDサプリメントの摂取はお控えいただけますようお願い申し上げます。
やっぱりコーヒーは偉かった!
2023年のはじめ、「くすりの話」の「偉いシリーズ」に「コーヒー」も仲間入りしました。
この時には、主にコーヒーに含まれているポリフェノールのひとつ「クロロゲン酸」の効果について、国立がん研究センター予防研究グループやお茶で有名な伊藤園の研究を中心にご紹介させていただきました。
今回は、国立大学法人筑波大学とダイドードリンコ株式会社の共同研究報告についてご紹介させていただきます。
以前には、クロロゲン酸が体内で「フェルラ酸」という物質に代謝され、認知症の予防・改善に有用である可能性をお伝えさせて頂きましたが、この度はマウスを用いた研究から、コーヒー由来成分の「トリゴネリン」が認知機能改善効果を発揮する可能性についてお伝えさせていただきます。
近年、加齢に伴う認知機能低下を改善する天然物質の探索は、健康的な老化を実現させるために重要な課題となっていますが、自然発症老化促進モデルマウスを用いた研究により、コーヒーの他、大根などにも含まれている「トリゴネリン」が、空間学習記憶能を有意に改善し、そのメカニズムとして神経系の発達やミトコンドリア機能、神経伝達物質の放出に関連するシグナルの活性化によるものであるということが発見されました。
さらには、NF-κBの活性化をネガティブに調節して神経炎症を抑制することや、たんぱく質定量解析により、海馬領域において炎症性サイトカインTNFα、IL-6が有意に減少し、神経伝達物質のドパミン、ノルアドレナリン、セロトニンを増加させていることも確認されました。
以上のことから、「トリゴネリン」は、加齢に伴う空間学習記憶(自分の居場所の認識)障害の予防改善に有用である可能性が示唆されました。
この度の研究報告から、「やっぱりコーヒーは偉かった」と思わせていただきました。
但し、コーヒーにはカフェインが含まれていますので飲みすぎには注意をしなければなりません。
多くても1日5杯までを目安にされますことを念のため申し伝えます。
先発医薬品の使用で自己負担額が増える?!~後発医薬品(ジェネリック医薬品)の供給は大丈夫?~
これまでも、患者さんの希望で後発医薬品(ジェネリック医薬品)のある先発医薬品(いわゆる長期収載品)の処方箋医薬品を受け取る場合に、後発医薬品との差額の一部を保険外の「選定療養」とすることが何度となく議論されてきました。
「選定療養」とは、社会保険に加入している患者さんが、追加費用を自身で負担することにより、保険適用外の治療を、保険適用の治療と併せて受けることができるようにすることです。
選定療養扱いになると、1割や3割といった負担割合ではなく、その一部が保険外の扱いとなり自己負担が増える仕組みです。
厚生労働省では、昨年12月から後発医薬品のある先発医薬品の「選定療養」について本格的な議論を始めており、詳細については今後明らかになってくるものと思われます。
現時点では、今回の制度の対象は後発医薬品の上市後5年以上経過したもの、または後発医薬品の置換率が50%以上となったものが対象で、後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の3が保険給付の対象となる方向で進められています。(正式決定は4月の予定です)
ということは、価格差の4分の1については、0割負担の患者さんでも自己負担が発生し、1割負担の患者さんも3割負担の患者さんも同額の負担増になります。
後発医薬品の使用は約20年間も国の施策として後押しされていますので、そろそろ医療費抑制のひとつの政策として実施に踏み切っても良いように思う反面、最近の後発医薬品不足はかなり深刻な状況であることから、今はその時期ではないようにも感じます。
今回の変更で、先発医薬品を好んで使用していた患者さんの一定数は後発医薬品に変更すると思われますので、ますます供給困難な状況を作り出し、混乱を招くことが容易に予想できます。
この度議論されている長期収載品の選定療養扱いは10月スタートを予定している様子ですが、医薬品の安定供給はまず困難な状況である中、国としてどのように安定供給への対策を考えているのか何ら示されていません。
個人的には、もし後発医薬品のある先発医薬品の「選定療養」を実施されるようなら、国民の不安を払拭するためにも、国としてきちんと説明をしていただき、誰もが納得できるわかりやすい制度を作っていただきたいと思うと同時に、製薬会社各社においても、医薬品の製造という社会的責任を重く受け止め、1日も早く医薬品を安定的に供給できるように努めていただきたく思います。