これまでも、患者さんの希望で後発医薬品(ジェネリック医薬品)のある先発医薬品(いわゆる長期収載品)の処方箋医薬品を受け取る場合に、後発医薬品との差額の一部を保険外の「選定療養」とすることが何度となく議論されてきました。
「選定療養」とは、社会保険に加入している患者さんが、追加費用を自身で負担することにより、保険適用外の治療を、保険適用の治療と併せて受けることができるようにすることです。
選定療養扱いになると、1割や3割といった負担割合ではなく、その一部が保険外の扱いとなり自己負担が増える仕組みです。
厚生労働省では、昨年12月から後発医薬品のある先発医薬品の「選定療養」について本格的な議論を始めており、詳細については今後明らかになってくるものと思われます。
現時点では、今回の制度の対象は後発医薬品の上市後5年以上経過したもの、または後発医薬品の置換率が50%以上となったものが対象で、後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の3が保険給付の対象となる方向で進められています。(正式決定は4月の予定です)
ということは、価格差の4分の1については、0割負担の患者さんでも自己負担が発生し、1割負担の患者さんも3割負担の患者さんも同額の負担増になります。
後発医薬品の使用は約20年間も国の施策として後押しされていますので、そろそろ医療費抑制のひとつの政策として実施に踏み切っても良いように思う反面、最近の後発医薬品不足はかなり深刻な状況であることから、今はその時期ではないようにも感じます。
今回の変更で、先発医薬品を好んで使用していた患者さんの一定数は後発医薬品に変更すると思われますので、ますます供給困難な状況を作り出し、混乱を招くことが容易に予想できます。
この度議論されている長期収載品の選定療養扱いは10月スタートを予定している様子ですが、医薬品の安定供給はまず困難な状況である中、国としてどのように安定供給への対策を考えているのか何ら示されていません。
個人的には、もし後発医薬品のある先発医薬品の「選定療養」を実施されるようなら、国民の不安を払拭するためにも、国としてきちんと説明をしていただき、誰もが納得できるわかりやすい制度を作っていただきたいと思うと同時に、製薬会社各社においても、医薬品の製造という社会的責任を重く受け止め、1日も早く医薬品を安定的に供給できるように努めていただきたく思います。