薬局でお薬をもらうときに「グレープフルーツジュースと一緒に飲まないでくださいね」と説明している場面を経験したことはないでしょうか。
高血圧症でお薬をもらっている方はよく耳にしているかも知れません。
これはグレープフルーツに含まれる「フラノクマリン」が薬物代謝酵素CYP3A4を阻害することにより、高血圧症のお薬のひとつカルシウム拮抗剤の効果を高めてしまうことが知られているからです。
それでは、注意するのは「グレープフルーツジュース」だけで、他の柑橘類、例えばオレンジジュースなどは大丈夫なのかなと気になりませんか?
同じ柑橘類でも「フラノクマリン」が含まれているものと、ほとんど含まれていないものがあります。
「フラノクマリン」を含む柑橘類は、例えばグレープフルーツの他にブンタン、ハッサク、夏みかん、ダイダイなどがあります。
一方、「フラノクマリン」が含まれていないのもとして、例えばバレンシアオレンジ、レモン、温州ミカンなどがあります。
ですので、正しく言えば「グレープフルーツジュースと一緒に飲まないでくださいね」ではなくて、「フラノクマリンを含む柑橘類と一緒に飲まないでくださいね」となるのですが、こんなことを言っても患者さんはピンときませんので、代表的な飲み物として「グレープフルーツジュース」と説明しています。
ちなみに、グレープフルーツは果汁より皮の部分に「フラノクマリン」が多く含まれてるので、グレープフルーツをまるごと絞ったジュースでなければ過剰に気にしすぎることもないかと思われます。
また、同じカルシウム拮抗剤であっても、CYP3A4の影響が少ないお薬もありますが、薬剤師は、万一お薬の効果が強く出すぎて、めまいやふらつきなどの副作用が生じるといけませんので、「グレープフルーツジュースと一緒に飲まないでくださいね」と説明しています。仮に間違えて飲んでしまったとしても、体調に変化がなければ過剰に心配することはございませんのでご安心ください。
余談になりますが、CYP3A4で代謝されるお薬は、カルシウム拮抗剤の他にも、脂質異常症でよく処方されている「スタチン系医薬品」や、睡眠導入剤の「ハルシオン」なども知られています。
例えば、就寝前に睡眠導入剤「ハルシオン」をグレープフルーツジュースなどで飲むと、薬の作用が強く出すぎることもありますので、特に高齢者は注意が必要です。
逆に、花粉症でよく使用されるフェキソフェナジンやビラスチンなどのお薬は、グレープフルーツジュースなどで服用すると作用を減弱する可能性もあります。
このように作用の増強・軽減の可能性がありますので、グレープフルーツジュースなどで服用してしまったときは、過剰に気にされずに数時間の経過観察をすれば良いですが、お薬を服用するときは、水またはぬるま湯で服用するのが安心・安全につながることだと言えます。