がん細胞の栄養源を断ち、「兵糧攻め」にする新たな化合物を開発し、増殖を抑えることに成功したとする研究成果を、大阪大学の金井好克教授(薬理学)らのチームがまとめた。
マウスで効果を確認しており、2018年度から薬剤として患者に使用する臨床試験(治験)を阪大病院で開始し、新治療薬の開発を目指す。
がん細胞は表面のたんぱく質の「入り口」から、栄養源のアミノ酸を取り込んで増殖するとされている。
チームはこれまでに、様々ながん細胞に共通して存在する「LAT1」と呼ばれる入り口を特定。この入り口を塞ぎ、がん細胞へのアミノ酸の補給を阻む化合物を開発した。
膵臓がんや胃がんなどの細胞に試験管内で加えたところ、がん細胞の種類にかかわらず増殖を抑える効果を確認。膵臓がんのマウスを使った実験でも、化合物を飲ませたほうが、何もしなかったマウスより長く生存した。
患者への負担が少ない飲み薬として開発する方針で、金井教授は「既存の抗がん剤と併用することで、より高い効果も期待できる。治療が難しい患者に対する新たな薬になれば」と話す。
(2017年3月15日 読売新聞)