急性骨髄性白血病(AML)の根治につながる治療法を開発したと、理化学研究所の石川文彦グループディレクターらの研究グループが25日付の米科学誌に発表した。患者の細胞を組み込んだマウス実験で約8割が根治したという。今後、ヒトへの応用のための研究を進める。
AMLは、複数の遺伝子異常で起こる血液のがん。研究グループはAMLを再現したマウスの遺伝子を解析。「FLT3」という遺伝子の異常が白血病細胞をつくることを突き止め、2013年には、この遺伝子異常の働きを抑える化合物を開発した。
一方で、大半のマウスはこの化合物だけでは白血病細胞の数は減るものの、根治できないこともわかった。研究グループは、「BCL2」というたんぱく質が、白血病細胞を生かす働きをしていることも突き止め、BCL2阻害剤とこの化合物を併用する治療法を開発。実験では、17人の患者のうち14人の細胞を組み込んだマウスの白血病細胞を死滅させることに成功したという。
AMLは、抗がん剤が効きにくく再発率が高い。研究グループによると、国内で毎年約3000人が死亡し、5年生存率は3割弱にとどまるという。研究グループは、理研が出資するベンチャー企業を米国に設立しており、19年にも患者への臨床試験を始める予定。石川グループディレクターは「AMLを根治する治療法として期待できる。一日も早く患者に提供できるように努力したい」と話している。
(2017年10月26日 毎日新聞)