耳の病気やけがで破れた鼓膜を再生させる新しい治療法に、公的医療保険が適用されることになった。治療法の開発に関わった北野病院(大阪市北区)によると、治療は20分程度で済むといい、保険適用を機に広く普及を目指す。
同病院の金丸真一・主任部長らが開発。鼓膜にできた穴の周囲を切除して薄くし、細胞増殖を促す薬を含むゼラチン製のスポンジを穴に詰め、医療用の生体接着剤で固定する。スポンジは耳の中で自然に分解される。穴の周辺の細胞が増殖し、数週間で穴が塞がる。
鼓膜の治療としては、耳の後ろ付近の組織から筋肉を包む膜を切り取って移植する手術が年間1万件ほど行われているが、数日から2週間の入院が必要で、鼓膜より厚い膜を使うため聴力回復も限定的だった。
金丸主任部長らは2007~16年に、今回の方法で計約420人の患者を治療し、7~8割で聴力が改善するなどした。鼓膜そのものが再生するため、従来法よりも高い治療効果が期待できるとしている。
保険適用は11月19日付で、自己負担3割なら1万8000円で治療を受けられる。同病院は今後、他の医療機関にもノウハウを伝える方針だ。
(2019年12月16日 読売新聞)