「白内障」は、年齢とともに目の中にある水晶体が白く濁って視力が低下する病気で、原因は様々ですが、加齢によるものが最も多いと言われています。
50代で約半数、80歳以上の高齢者では、なんとほぼ100%の人が罹患しているそうです。
白内障治療は、点眼薬や手術などによる治療がありますが、「白内障手術」は日帰り手術が今では当たり前になっていますね。
しかし、その「白内障手術」を受ける際に、思わぬ落とし穴があるのをご存じでしょうか?
実は、中高年齢層の方が服用されている可能性の高いお薬が、白内障手術に大きな影響を与えることがあるんです!
例えば、前立腺肥大症による排尿困難に対して「α1受容体遮断薬」というお薬を使用することがあります。
α1受容体遮断薬は、前立腺の筋肉を緩めて排尿困難を改善しますが、α1受容体遮断薬を飲んでいる患者が瞳孔(虹彩)を開いて行われる白内障の手術を行った場合に、手術中に瞳孔(虹彩)が突然閉じてきて手術の進行を妨げてしまう、「術中虹彩緊張低下症候群(IFIS)」と呼ばれる症状を引き起こすことがあります。
「術中虹彩緊張低下症候群(IFIS)」は、まだ比較的最近(十数年前)になってから知られてきたもので、前立腺肥大症の薬だけでなく、高血圧症の薬などのように同じ作用を持つ薬でも注意が必要です。
これらの薬を服用される方は、中高年齢層の方が多く、白内障手術をされる機会も高まることが考えられますので注意しなければなりません。
【術中虹彩緊張低下症候群に注意を有する薬の一例】
●前立腺肥大症治療薬
タムスロシン塩酸塩、シロドシン、ナフトピジル、ウラピジル
●高血圧症治療薬
ドキサゾシンメシル酸塩、ブナゾシン塩酸塩、ラベタロール塩
●統合失調症治療薬
リスペリドン、パリペリドン酸塩
●緑内障
ブナゾシン塩酸塩
上記の薬が必ずしも術中虹彩緊張低下症候群を引き起こすわけではありませんが、白内障手術を行うことになった場合は、眼科医にα1受容体遮断薬を服用していることを伝えるようにしてください。
このように、服用中のお薬が他の薬との相互作用や手術に影響を及ぼすこともありますので、普段からお薬手帳を持参し、医師や薬剤師に現在使用している薬の内容を伝えておくことも大切だと思います。