百日咳が流行し、毎日のようにニュースでも取り上げられています。
それもそのはず、2025年4月7日~4月13日の1週間に報告された感染者数は、比較できる2018年以降で、3週連続で過去最多を更新しています。
この時期でなんと、すでに2024年の年間報告者数を上回っているとのことですので、これは尋常ではありません。
百日咳は、激しい咳を伴い、微熱など風邪と似た症状からはじまり、次第に咳が強くなってきます。乳幼児や免疫力が低下している高齢者が感染すると重症化することもあり、乳児が感染すれば、死亡する恐れもある疾患ですので注意が必要です。
百日咳の感染や感染拡大を防ぐために最も大切なのはワクチン接種ですが、最近の感染者の推移をみると、これまで感染の中心だった乳幼児は感染者全体の10%程度にとどまり、約60%は10~19歳の若年層のようです。
それではなぜ若年層の感染者が増加しているのでしょうか?
その原因はいくつか考えられますが、いままで感染の中心だった乳幼児ではワクチンが定期接種されているため免疫を獲得できている一方で、10~19歳の若年層では免疫が減衰しており、学校やクラブ活動において集団で接触する機会が増えていることに加え、百日咳ワクチンの追加接種が任意であるため積極的に行われていないことも考えられます。
さらに、現在流行している百日咳は、治療薬であるマクロライド系抗菌薬が効かなくなっていることも見逃せません。
「小児呼吸器感染症診療ガイドライン」では、マクロライド耐性百日咳菌に対して、本来は百日咳に使用する抗菌薬ではない、ST合剤と呼ばれる抗菌薬を使用することを推奨しています。
いずれにしても百日咳対策として大切なことは予防ですので、特に生後2か月を迎えたら速やかに5種混合ワクチンを接種することが大切と思われます。
また、今後若年層や高齢者に感染者数が増加し続けるようなら、感染予防の立場から追加ワクチン接種を積極的に行う必要性を広く認知させ、自己負担額を軽減するなどを含めて国をあげての追加ワクチン接種の推奨が必要になるかも知れません。