九州大理学部の広津崇亮(たかあき)助教、伊万里有田共立病院の園田英人外科部長らの研究グループは、わずかな匂いをかぎ分けることのできる線虫の性質を利用し、患者の尿でがんの有無を調べる方法を開発した、と発表した。
がんを簡単に診断できる方法として、実用化を目指すとしている。電子版米科学誌「プロスワン」に12日掲載される。
がん患者には特有の匂いがあることが知られている。線虫は実験材料としてよく用いられる体長1ミリ程度の生物で、特定の匂いに集まったり、匂いから逃げたりする性質がある。
研究グループは、線虫ががん患者の尿に集まることを発見。がん患者24人の尿を用いた実験では23人(95・8%)の尿に集まり、逆に、健康な218人では207人(95%)の尿で避ける反応を示した。患者は未治療の状態で抗がん剤の影響はない。
課題は何のがんか分からないことだが、すでに大腸がんなどいくつかのがんについて特定できる線虫を作製できているという。
導入には線虫の培養装置などがあればよく、従来のがんの血液検査などに比べ、1件数百円程度の安価で済むとしている。日立製作所などと共同で検診システムの開発に取り組む。
(2015年3月12日 読売新聞)