近年、腸内の環境を整えることは、健康維持に非常に重要であることは広く認識されるようになってきました。
例えば、腸管免疫系は身体の免疫系全体の約60%を担っていることや、「腸は第二の脳」とも言われるように腸管から脳に指令を出していることなども徐々に明らかになってきており、腸内細菌を利用して様々な疾患に対する治療の研究も始まっています。
最近では、一部の乳酸菌が体内でどのような働きをしているのかという具体的なことまで知られるようになっています。
今や、腸内細菌叢のバランスを整えることは、健康を維持する上で常識となってきました。
今回は、腸内細菌療法の取組みの中から、ホットな情報として、国立精神神経医療研究センター神経研究所特任研究部長の山村隆氏の研究と神戸大学大学院医学研究科の山下智也氏の研究について、一部ご紹介いたします。
山村氏らは、中枢神経系の自己免疫疾患の指定難病である「多発性硬化症」の患者は、酪酸発酵に関与する細菌数が有意に減少していることを突き止め、マウスに減少している腸内細菌を移植するという研究を行っています。
海外では多発性硬化症の患者に減少している腸内細菌をカプセルに封入し腸内に移植するという臨床研究が既に行われているようです。
2011年には、一見関係のないように思われる、「動脈硬化と腸内細菌との関わり」についても指摘され、科学雑誌「Nature」に論文発表されて話題にもなりましたが、神戸大学大学院医学研究科の山下智也氏らは、どの腸内細菌が冠状動脈疾患と関わりがあるのかという研究を実施しています。
これらの他に、潰瘍性大腸炎の患者に、腸内細菌に介入する治療方法として糞便移植療法がすでに始まっていますが、腸内細菌叢と健康(病気)については、まだまだ解っていないことが多いのも事実ですが、今後ますます明らかにされ、腸内細菌の腸内移植療法も活発になってくるものと思われます。
将来的には、腸内細菌を利用した病気の「予防」や「治療」が、普通に行われるようになってくる日も近いように感じます。