生命の設計図であるDNAが折り畳まれた「染色体」のうち、遺伝子読み取りの際に変化する重要な部分の構造を解明したと、 胡桃坂 仁志・早稲田大教授らが発表した。
がん治療の研究に役立つ可能性があり、論文が米科学誌サイエンスに掲載された。
染色体は、DNAがたんぱく質に巻き付いた「ヌクレオソーム」が無数に連なってできている。DNAの遺伝情報が読み取られる場所では、ヌクレオソームが移動して隣のヌクレオソームと合体すると考えられていたが、この部分の詳しい構造などは分かっていなかった。研究チームは、合体したヌクレオソームを試験管内で人工的に作り、詳細な立体構造を解明することに成功。この構造が、実際に細胞内で読み取り場所の近くにできることも確認した。
胡桃坂教授は「この構造の形成不全が、細胞のがん化に関係しているとみられ、がんの創薬研究に役立つ」と話している。
木村宏・東京工業大教授(細胞生物学)の話「DNAが働くための基礎的な仕組みの一端を解明した成果だ」
(2017年4月17日 読売新聞)