昼間に急激な眠気に襲われる深刻な睡眠障害「ナルコレプシー」の症状が、脳内の覚醒物質「オレキシン」に近い働きをする物質で抑えられることをマウスの実験で確かめたと、筑波大の研究チームが発表した。ナルコレプシーの治療は対症療法しかないが、根本的な治療薬の開発が期待されるという。16日の米科学アカデミー紀要に掲載された。
ナルコレプシーは日中、突然眠気に襲われたり、感情が高まると筋肉が脱力したりするなどの症状がある。1000人に1人が発症するといわれ、社会生活への影響が大きい。
脳内の覚醒物質オレキシンの不足が原因とされるが、オレキシンは静脈注射などによって投与しても脳まで届かず、効果がない課題があった。
研究チームは、脳に到達し、オレキシンと同様の働きをする化合物を開発。ナルコレプシーの症状があるマウスに投与したところ、脱力する発作が抑えられ、連続投与しても効果が持続したという。
一方、この化合物は経口投与では症状の抑制効果が弱いなどの課題もあるという。チームの柳沢正史教授は「経口投与で、強い効果がある物質を見つけたい」と話している。
(2017年5月16日 毎日新聞)