人の臓器や組織の細胞を組み込んで、体内に近い状態を再現した「臓器チップ」を開発したと、京都大のチームが発表した。
実験動物を使わずに抗がん剤の副作用を確認でき、医薬品の開発に役立つという。論文が英科学誌電子版に掲載された。
チップは樹脂製で縦25ミリ、横75ミリ、厚さ5ミリ。半導体などを作る微細加工技術で、中に複数の小さな部屋を作り、部屋どうしを血管を模した極細の管でつないでいる。それぞれの部屋に臓器や組織の細胞を入れ、管を通して薬の成分が循環する。
チームは、人の肝臓のがん細胞と心臓の筋肉の細胞を、別々の部屋に入れ、抗がん剤を注入。すると、肝臓がん細胞は死滅するが、抗がん剤の攻撃を受けた細胞が出す物質が循環して、心筋細胞も傷つけることがわかったという。
京大の亀井謙一郎・特定拠点准教授(幹細胞工学)は「世界的に実験動物を減らそうという動きもある。将来は、より臓器に近いチップを開発したい」と話している。
(2017年8月2日 読売新聞)