抗がん剤治療で疲労感や心疾患などの副作用の原因となる、心筋の硬化を防ぐメカニズムを解明したと、自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)と群馬大、九州大などの研究チームが3日、米医学誌「JCIインサイト」電子版で発表した。副作用の軽減に道を開く成果という。
研究では、広く治療に使われているアントラサイクリン系の抗がん剤をマウスに投与し心筋の細胞を調べた。その結果、細胞膜でカルシウムの透過にかかわるたんぱく質「TRPC3」と酵素の一つ「Nox2」が結びつき、活性酸素が増えて心筋細胞を萎縮させていることが分かった。疲労感などの副作用はこれが原因という。
さらに、このメカニズムを妨げる薬剤を探し、免疫治療のため開発され、実用化されていない薬剤「ピラゾール3」を投与したところ、たんぱく質と酵素の結びつきを阻害し、萎縮を抑制できたという。
研究リーダーの西田基宏・生理研教授(循環生理学)は「今後研究が進めば、抗がん剤の安全で継続的な使用が可能になり、副作用のためこれまで抗がん剤が使えなかった患者にも治療の可能性が期待できる」と話している。
(2017年8月3日 毎日新聞)