「酒は百薬の長」と聞けば、お酒好きの方にとっては、何とも聞こえの良い嬉しい言葉かも知れません。
しかし、これは言うまでもなく、「適度な量」に限ったお話で、適度な量のお酒は精神的にリラックスさせて緊張をほぐしてくれたり、血行を良くしたり、HDL-コレステロール(善玉コレステロール)を増加させたり…と、体に対して良い作用を及ぼすこともあるということです。
しかし、もちろんですが、飲みすぎはよくない事は言うまでもありません。
ところで、最近では、「適度な量」であっても、お酒が体に悪影響を及ぼす可能性も報告されています。
例えば、アルコールの摂取が、脳の記憶に関係する「海馬」の萎縮と深い関わりがあるという報告があります。
これまで、大量飲酒と認知症発症の関係や、少量の飲酒と認知機能障害の予防との関係についての報告がありましたが、「適度なアルコール摂取と脳に対する影響」を調べた研究報告はほとんどありませんでした。
この度、「適度なアルコール摂取と脳に対する影響」について、オックスフォード大学の研究グループが30年間わたる550例の追跡調査を行い、その研究結果が報告されました。
報告によると、アルコール摂取量が多いほど海馬萎縮のリスクが上昇し、摂取なし群との比較に
おいて、適度なアルコール摂取群であっても右側海馬萎縮のリスクが3倍に上昇し、少量摂取群においても認知機能予防効果は認められませんでした。
但し、今回の研究では、論文を発表した著者もアルコール摂取量は自己申告であることなどを
考慮すると課題が多い点を指摘しています。
いずれにしても、毎日の晩酌で飲みすぎたり、たまに深酒をするのは、健康には良くないことは
容易に予想できます。
お酒を百薬の長とするためには、たとえ適量と思われる量であっても、毎日の飲酒ではなく、週に2~3回程度で楽しむのが良いのかも知れません。