特殊なたんぱく質を含む培養液で、骨格筋の幹細胞を培養することに成功したと、東京医科歯科大の赤沢智宏教授のチームが11日付米科学誌「ステムセル・リポーツ」で発表した。全身の筋力が低下する難病「筋ジストロフィー」など筋肉に関する病気の創薬や、治療法開発につながる成果だという。
骨格筋の幹細胞は、骨格筋を構成する筋線維の表面にあり、体内で筋損傷が起こると、幹細胞が増殖して新しい筋肉へ成長し始める。幹細胞を体外へ取り出すとすぐに筋肉に成長してしまううえ、筋肉に成長してから体内に戻しても元の筋肉に根付かなかった。
体外での幹細胞培養を目指していたチームは、筋線維の表面で幹細胞周辺に多く存在する三つのたんぱく質を特定。それらと分子構造が似ているたんぱく質などを使って幹細胞を培養すると、筋肉にならずに幹細胞のまま増殖できた。この方法で健康な成人から提供された幹細胞を培養し、筋ジストロフィーの症状を持つ免疫不全マウスに移植すると、マウス体内で筋肉の細胞へと成長することを確認できたという。
実験を担当した東京医科歯科大大学院生の石井佳菜さんは「難病発症のメカニズムを解明し、創薬にもつなげたい」と話した。
(2018年1月12日 毎日新聞)