血液のがんの一種「慢性骨髄性白血病」について、生体内の細胞の移動を制御する遺伝子「Sipa(スパ)1」が失われると、免疫細胞が白血病細胞を攻撃して病気を治すことをマウスを使って突き止めたと京都大の研究グループが発表した。体に本来備わっている免疫機能を利用したがん治療薬「オプジーボ」と同じメカニズムを白血病治療にも活用できる可能性を示す成果という。
論文が英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」で2日、掲載された。
慢性骨髄性白血病は全ての白血病のほぼ2割を占める。研究グループによると、正常なマウスに白血病の原因となる細胞を注射すると全て白血病で死亡したが、人為的にSipa1を欠損させたマウスは全く発症しなかった。また、正常マウスでは白血病細胞が増え続けるが、欠損マウスでは一定の時期から白血病細胞が減ったとしている。
更に欠損マウスを詳しく調べた結果、免疫細胞が白血病細胞の組織に入り込んでいる様子が確認できた。白血病細胞付近に、傷の治癒などに役割を果たす細胞が集まり、それを目印に免疫細胞が移動。通常はSipa1が免疫細胞の動きを制御しているが、なくなることでブレーキが解除された状態になり、白血病を治癒させたとみられる。
ただ欠損マウスでは白血病が完治した後、他の病気にかかりやすくなった。このため、ヒトに応用する場合は、Sipa1を無くすのでなく、働きを一時的に制御する薬が必要になる。研究に携わった京都大副学長で大学院医学研究科の湊長博特命教授は「白血病根治につながる新たな免疫療法の確立につながれば」と話している。
(2018年3月2日 毎日新聞)