慶応大学と理化学研究所などは12日、進行、再発したがんを対象に、新たな免疫療法の医師主導臨床試験(治験)を共同で始めると発表した。白血球に含まれる「ナチュラルキラーT(NKT)細胞」を活性化させて治療するもので、動物実験では、1回で約1年効果が続いたという。
NKT細胞は、谷口 克 ・理研グループディレクターらが発見した免疫細胞。他の免疫細胞を長期にわたって活性化し、がんを縮小させる効果があると考えられている。患者の血液を採取し、特殊な物質を加えて培養した上で患者に戻すとNKT細胞が体内で活性化し、免疫反応が強まる。動物実験では、がんの種類を問わず、進行や転移を抑制できたという。
治験は、慶応大を中心に実施。20~74歳の進行、再発がんの患者12~18人を登録し、患者の血液を培養して作ったものを4週間あけて2回、点滴投与する。12月まで患者を集め、3年間にわたり生存率などを見る。安全性や効果が確認され、治験が順調に進めば、6年後の実用化が期待できるとしている。
谷口氏は「自分の血液を使うのでアレルギー反応などが少なく、既存の免疫治療薬との併用で効果の上乗せも期待できると考えている」と話す。
(2018年3月12日 読売新聞)