もともと和食文化は日本人の専売特許のような「健康長寿」につながるすばらしい文化です
が、「灯台もと暗し」とでもいいましょうか、日本人の食の欧米化は留まるところを知りません。
例えば、日本の食文化の中でも、忘れられがちなのが「緑茶」、いわゆる日本茶です。
昔から飲み継がれてきた緑茶には、健康に良い作用が期待できる苦味成分のカテキンと、うまみ成分のテアニンなどが含まれていて、様々な有用性が確認されています。静岡県のホームページには、緑茶のがん抑制効果、メタボ予防効果、腸内細菌叢調整効果などの他、多くの健康効果について紹介されており、世界的にも緑茶の作用が見直されています。
最近、緑茶摂取と認知症リスクに関するシステマティックレビュー(質の高い研究論文調査して、データの偏りを除いて公平に分析を行うこと)の報告を目にしました。その結果によれば、緑茶摂取が認知症、軽度認知障害などのリスクを減少させる可能性が支持されると結論付けられています。さらには、東北大学の研究では、緑茶を1日5杯以上飲用する人は、1日1杯未満の人と比べると、認知症発症リスクが低下していることを報告しています。
そして、和食の素晴らしさは緑茶だけではありません。東北大学の別の研究によれば、食事の和食パターンの人は、動物性食品パターン、高乳製品パターンの方と比べると認知症発症リスクが低下していることを報告しています。
ところで、「ま・ご・わ・や・さ・し・い」という言葉をご存知でしょうか。
これは、健康に役立つ和の食材をバランスよくとるために、食材の最初の文字を取って、覚えやすくしたもので、食品研究家で医学博士の吉村裕之先生がおっしゃっている言葉です。
「ま」は、大豆をはじめとする豆類のことです。
味噌、豆腐、豆乳などの豆製品で、特に大豆は、皆さんご存知の大豆イソフラボンをはじめ、良質のたんぱく質の宝庫です。
「ご」は、ごま、ナッツなどのナッツ類です。
ごまは、マグネシウム、マンガン、カルシウムなどのミネラルや、ビタミン、脂質、タンパク質など、さまざまな栄養成分が豊富に含まれていて、抗酸化作用をはじめ、コレステロール低下作用、抗高血圧作用、疲労回復などに効果があると言われています。
「わ」は、わかめをはじめとする海藻類です。
海藻は海中の栄養素が溶け込んだ海で育つため、カルシウム・カリウムといったミネラル成分、および食物繊維を豊富に含んでいます。また、免疫力を高める成分(フコイダンなど)も含まれています。
「や」は、野菜類です。
緑黄色野菜は抗酸化作用にすぐれ、健康に良いことは広く知られていますが、キャベツや玉ねぎといった淡色野菜は、免疫力を高めたり、高血圧を緩和したりする作用があります。
淡色野菜や根菜など野菜全般に健康に良い作用があるので、バランス良く摂ることが大切です。
「さ」は、魚類です。
魚に含まれるDHAやEPAは、脂質異常症改善の医薬品にもなっている成分で、血流改善作用や最近では認知症に対しても良い作用があることが複数報告されています。
「し」は、しいたけなどのキノコ類です。
キノコ類は低カロリーでビタミン類、食物繊維、ミネラルなどの栄養素が豊富に含まれており、免疫力を高める作用などが期待できる食材です。
「い」は、いも類です。
いも類は食物繊維を豊富に含んでいるので、血糖値を急激に上げすぎることなく、脳や体のエネルギー源になります。
また、便秘解消効果もあります。ビタミンやミネラル、カリウム、抗酸化作用のあるポリフェノールなども豊富で、栄養的に優れた食品です。
このような素晴らしい和食文化をもう一度見直して、健康長寿に役立てたいものですね。