メタボリック症候群は、聴力の低下にも関係していることが国立国際医療研究センターなどの大規模疫学研究で判明した。
同センター疫学・予防研究部の溝上哲也部長らの研究チームが、関東・東海地方に本社のある企業十数社の従業員計約10万人を対象としたJ-ECOHという研究の一環として実施。平成20~23年度の健康診断で聴力が正常だった20~64歳の約5万人を最大8年間追跡調査した。
対象者を「体格指数(BMI)が25以上の肥満か」と「血圧・血糖・中性脂肪・善玉コレステロールの値が2項目以上メタボリック症候群の基準に該当するか」との条件で4グループに分け、1000ヘルツ未満の低音域と4000ヘルツ超の高音域で、聴力低下が起きるリスクを比較した。
その結果、BMI25未満の非肥満のグループを1としたときの25以上30未満のリスクは低音域で1.22倍、30以上では1.72倍になった。高音域でも同じく太っているほどリスクが高かった。
研究チームは、高血圧や代謝異常による動脈硬化で血管が狭まったりふさがったりし、耳への血流が減少すること、肥満に伴う酸化ストレスや炎症、低酸素などで聴覚細胞が損傷することなどが影響するとみている。
(2019年7月30日 産経新聞)