大阪大は29日、他人の細胞をもとにしたiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った目の角膜の細胞シートを、重い目の病気「角膜上皮幹細胞疲弊症」を患う40歳代の女性患者の左目に移植する手術を行ったと発表した。
手術は7月25日に実施。女性は日常生活に支障がない程度まで視力が改善しているといい、今月23日に退院した。iPS細胞から作った角膜の細胞を移植する手術は世界初。
女性は両眼が失明に近い状態だったが、左目は本や新聞が読める程度まで視力が回復しているという。
従来の治療では、亡くなった人から提供される角膜を移植しているが、手術後、強い拒絶反応で移植した角膜がはがれ落ち、1年以内に再び見えなくなるケースが多いことが課題だ。
チームによると、iPS細胞から作ったシートは長い治療効果が期待できるという。今回は治療の安全性や有効性をみる臨床研究のため、移植は左目だけに行い、1年間かけて経過を観察。来年度までに、さらに成人患者3人に手術を行う。
(2019年8月29日 読売新聞)