最近、アンチエイジングの研究の中で、「NMN」という物質がにわかに注目されています。
「NMN」とは、ニコチンアミド・モノヌクレオチドの略で、生命維持に欠かせない補酵素として知られ、健康と寿命を司るサーチュイン遺伝子を活性化することが知られています。
少し前になりますが、NHKの番組でもブドウの皮などに含まれるポリフェノールの1種のレスベラトロールが「サーチュイン遺伝子」を活性化させることが放映され話題となりましたので、「サーチュイン遺伝子」という言葉は、耳にしたことがあるのではないでしょうか。
人生100年時代と言われて久しいですが、加齢とともに筋力も衰え、肌にシミやシワが目立つようになり、視力や体力が落ちてくることや、さらには、病気のリスクも高まり、認知症も気になってくると、手放しで喜んでばかりいられません。
このような老化に伴う悩みが解消されれば、「健康長寿」として大いに歓迎されるところです。
そこで「NMN」が「若返りの秘薬」としてにわかに注目されてきたわけですが、「NMN」は、もともと人間の身体の組織や細胞に存在する物質で、体内でNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)に変化し、老化や寿命をコントロールするサーチュイン遺伝子をつくりだし、全身のさまざまな機能を回復させることがわかっています。
NMN研究の第一人者のワシントン大学医学部教授の今井眞一郎氏らの研究グループは、2007年からマウスを用いた研究をスタートし、1年間毎日「NMN」を与えたところ、見た目、運動能力、活動量が細胞レベルで若返り、明らかな老化抑制効果が認められたことを発表しています。また、本年4月には、55歳~75歳の閉経後の糖尿病予備軍で肥満女性25名による臨床試験を行い、糖の取りこみ機能の改善が見られたことを論文で発表しています。
今井眞一郎氏によれば、「NMNは、老化を食いとめ、健康寿命を延ばすことが期待される物質です。ところが、体内のNMN量は加齢によって減少し、それに伴い、NAD量も減っていきます。
そこで、化学的に生成されたNMNを、体外から補充することを考えたのです。
現在はヒトを対象にした臨床試験も重ねており、その結果は、近いうちに発表できると思います。とはいえ、人間における抗老化作用が確認できるまでには、もう少し時間がかかるでしょう。
NMNはまだ研究段階で、解明できている点もあれば、解明されていない点もあります。それを理解し、しっかり研究に取り組んできた専門家が発信する情報に基づき、納得の上で活用いただきたいですね」と述べています。さらに現在では、NMNの脳への作用を重点的に研究しており、その結果は年内には発表される見込みだそうです。
以上のように「NMN」は、アンチエイジング分野で注目されている成分ですが、上述のレスベラトロールのサーチュイン遺伝子活性化作用は、ミトコンドリア増加作用によるものと考えられていることから、「NMN」のこれらの作用もミトコンドリアの増加作用に関与している可能性が考えられます。
ミトコンドリアの増加作用といえば、皆様ご存知の「PQQ」が有名ですが、その作用はなんと「NMN」の約1,000倍も強いことが実験によって知られていますので、「PQQ」もまたアンチエイジング分野でもますます注目されるようになってくるのではないかと期待されるところです。