免疫チェックポイント阻害薬と言えば、「免疫抑制の阻害による癌治療法の発見」として、2018年に京都大学特別教授の本庶佑氏が日本人5人目となるノーベル医学生理学賞を受賞したことで話題になったことで記憶に新しいところです。
現在では、免疫チェックポイント阻害薬は国内でも保険適応され、多数の医薬品が使用され、がん治療方法のひとつとして確立されています。
しかし、人によって効果が現れにくい場合があることが指摘され課題となっています。
なぜ、効果が現れやすい人と現れにくい人がいるのか、その違いはどこにあるのかとい
う研究が継続される中、最近の研究により免疫チェックポイント阻害薬で効果が現れやすい人の腸内細菌叢において特徴的な腸内細菌をもっていることが明らかになり、酪酸産生菌であるRuminococcaceae は、その特徴的な腸内細菌のうちのひとつであることがわかっています。
この度、米国イェール大学の研究者らにより、「AHCCのマウス大腸がんにおける免疫チェックポイント阻害薬による抗腫瘍効果増強作用」についての研究成果が2022年4月に論文掲載されました。
この研究では、マウスに大腸がん細胞を移植し、免疫チェックポイント阻害薬とAHCCを併用投与したところ、免疫チェックポイント阻害薬単独に比べて腸内細菌Ruminococcaceaeが増加し、T細胞が活性化され、がん細胞の増殖が抑制されたことがわかりました。
これらのことにより、AHCCは免疫チェックポイント阻害薬の効果を現れやすくし、抗がん作用の効果を高める可能性が示唆されました。
この研究では、動物実験による結果であることや一部のがん種に対する結果であることから、さらなる検証が必要であることは言うまでもございませんが、数なくともAHCCが免疫チェックポイント阻害薬に悪影響を及ぼさないことが示唆されたものと思われます。今後のさらなる研究に期待したいところです。