「うつ病」は、潜在患者を含めると20人にひとりはいるとも言われているほど私たちにとって身近な存在になりつつある病気です。
うつ病になった場合は、治療をしていても再発する可能性が高いため、予防対策を心がけることが大切と言えます。
予防対策としては、生活習慣の見直しから考えることが大切です。
その中でも特に、
(1)適度な運動を心がけること
(2)食生活を見直すこと
(3)睡眠をしっかりとること
…などがあります。
今回は、その中でも食事に関することから、ホットな話題も含めてお伝えします。
うつ病患者さんに不足している栄養素を調べるために、血液検査を行っている医療機関もあるほどで、鉄分・葉酸・ビタミン・アミノ酸(たんぱく質)・脂肪酸・ミネラルが不足している方が多いと言われています。要は、バランスのとれた食事をしっかりとることが大切だと言えます。
ところで、日本のコホート研究(疾病の要因と発症の関連を調べる観察的な研究)において、野菜、果物、フラボノイドの豊富な果物(リンゴ、梨、柑橘類、ブドウ、イチゴなど)の摂取が、うつ病のリスク低下と関連するかどうかを国立精神・神経医療研究センターの成田 瑞氏らの研究グループにより調査した結果、果物およびフラボノイドの豊富な果物の摂取量が多いほど、うつ病の発症率が低かったことがわかり、2022年9月26日付のTranslational Psychiatry誌で報告しています。
調査は、1990年時点で長野県南佐久郡8町村に在住の40~59歳の1万2,219人のうち、1995年と2000年に行った2回の食事調査アンケートに回答があり、かつ2014~15年にかけて実施した「こころの検診」に参加した1,204例(男性500例、女性704例)を対象としています。
その結果、果物全体とフラボノイドが豊富な果物の両方について、最も多く摂取したグループは、最も少ないグループと比較してうつ病発症のリスクが低かったそうです。
「このことは果物が持つ抗酸化作用などの生物学的作用がうつ病の発症に対して予防的に働いた可能性が考えられる」と考察しています。
抗酸化作用が期待できる食べものを日常から積極的に摂取することも健康維持に欠かせない生活習慣のひとつと言えるのかも知れません。
特に最近の若い世代の方は、和食よりもファーストフードや肉食が中心になっている傾向があることを考えると、うつ病だけでなく、メタボリックシンドローム予防などを含めて、偏りのない食生活を心がけることも心身の健康維持に大切だと思われます。