今回は国内初となる消化器がん患者さんを対象とした腸内細菌叢移植療法の安全性と有効性を目的とした、切除不能進行・再発食道がん・胃がん患者さんを対象に開始された臨床試験の話題を、国立研究開発法人国立がん研究センターホームページから抜粋して
ご紹介させて頂きます。
(https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2024/0809/index.html)
この臨床試験は、国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院と順天堂大学、大学発ベンチャー企業メタジェンセラピューティクス株式会社が実施するもので、2024年8月より「胃がん・食道がん患者に対する免疫チェックポイント阻害薬と腸内細菌叢移植併用療法」について、安全性と有効性を検討するものです。
この試験の背景は、近年では腸内細菌叢の研究は大きく進展し、様々な疾患との関係やヒトの免疫機能への影響が明らかになりつつある中、海外では腸内細菌叢に着目した治療の開発が進んでおり、がん領域の腸内細菌叢移植研究では、免疫チェックポイント阻害薬による治療効果が得られない悪性黒色腫の患者さんに対して、腸内細菌叢移植によりがん免疫が増強され、治療奏功割合が改善される可能性を示唆した報告がされています。そんな中で、国内では、様々ながん種の中で、2020年に食道がんは約2.5万人が新たに診断され約1.1万人が亡くなりました。また、胃がんは約11万人が新たに診断され約4.2万人が亡くなっています。
食道がんや胃がんの治療においては免疫チェックポイント阻害薬により治療の選択肢が広がっている一方で、治療効果が得られない患者さんに対する新たな治療法が待ち望まれていますんので、この度の臨床試験がその一助となれば、毎年多くの方が亡くなられている食道がん、胃がんの患者さんに朗報になるものと思われます。
このように、やっと国内でも腸内細菌叢に関する研究が注目されるようになってきました。今後は、がん免疫だけでなく、「脳-腸相関」の立場から、腸内細菌叢と病気の関係はますます重要になってくるものと感じますので、今後の研究成果の報告に期待したいものです。