ビタミンDは、骨代謝にかかわるビタミンとしてよく知られていますが、日光を浴びることによって体内で合成することができることや、高齢者の方には医薬品として処方されることが多いビタミンであることから、あまり注目されていませんでした。
そんなビタミンDの有用性について今までにも「ビタミンDサプリメントの摂取と癌死亡率低下の可能性」や、「パーキンソン病やアルツハイマー型認知症の予防改善の可能性」、「免疫力を高める作用」などの紹介をしてまいりました。
今回は、血清ビタミンD濃度が低い高齢者は骨格質量指数(SMI)が低く、握力が低下しサルコペニアのリスクが高まる可能性についてご紹介させて頂きます。
この研究結果は、大阪大学大学院医学系研究科老年・総合内科学の赤坂憲氏らのグループにより、2024年8月に「Geriatrics & Gerontology International」に掲載されています。
サルコペニアは、筋肉の量や筋力が低下した状態で、移動困難や転倒・骨折、寝たきりのリスクが高まる他、男女ともに死亡リスクは2倍以上高まることが知られ、治療薬がないことから、筋肉に適度な負荷をかける運動やたんぱく質の摂取を中心とする食事療法がその予防・改善策として重要と考えられています。
赤坂氏らは、東京都と兵庫県の地域住民を対象とした高齢者長期縦断研究のデータを用いてサンプル数が十分な70歳代と90歳代の横断的解析を行いました。
その結果、この研究では横断的解析であり因果関係は不明なことや日光暴露時間、栄養素摂取量が不明な点が課題であることを述べたうえで、血清ビタミンDレベルは歩行速度には影響しないものの、骨格質量指数(SMI)や握力との関係を明らかにしています。
さらなる研究が必要ではありますが、近年では骨粗しょう症治療薬として処方されているビタミンDにサルコペニアに対する保護的作用もある可能性が報告されていることを考慮すると、血清ビタミンDレベルを維持することは骨格筋量の維持に寄与し、サルコペニア予防につながる可能性を示唆した研究結果であると考えられます。
たかがビタミン、されどビタミン。
またひとつビタミンDの新たな有用性が加えられましたが、その他ビタミンC、ビタミンB群などにも様々な新たな有用性が知られていますので、特にご高齢の方は、積極的に総合ビタミンの摂取を心がけることは、健康長寿につながる一つの手段かも知れません。