アルツハイマー病のマウスに遺伝子治療を施し、記憶障害をほぼ正常なレベルに改善させることに世界で初めて成功したと、西道(さいどう)隆臣・理化学研究所シニア・チームリーダーと岩田修永(のぶひさ)・長崎大教授らのチームが18日付の英科学誌に発表した。予防や治療法の開発につながる可能性がある。今後、霊長類の実験を経て、安全性が確認されれば臨床試験を目指す。
アルツハイマー病はベータアミロイドという不要なたんぱく質が脳内に過剰にたまり、神経細胞を壊し発症する。
チームは2001年、ベータアミロイドを分解する酵素「ネプリライシン」を発見。その後の国内外の研究から、この酵素の働きが低下すると、アルツハイマー病を発症することが分かった。
そこで、神経細胞でネプリライシンの生成が高まれば治療につながると考え、ネプリライシンを作る遺伝子を組み込んだウイルスを開発。初期のアルツハイマー病を発症したマウスに注射する遺伝子治療を実施した。
その結果、ベータアミロイドの量は半減し、健康なマウスとほぼ同じ量になった。迷路でゴールに到着する時間から記憶力を測ると、健康なマウスと互角になっていた。
アルツハイマー病の国内の患者数は約200万人。ベータアミロイドが蓄積し始めてから症状が表れるまで約20年かかるとされる。西道さんは「一定の年齢を迎えたら接種するようにすれば、発症防止にもつなげられる」と話す。
(2013年3月18日 毎日新聞)
コメントを残す