京都大医学部の椛島(かばしま)健治准教授(皮膚科学)らのグループは、異物侵入を防ぐ皮膚のバリアー機能を高めることでアトピー性皮膚炎を抑える効果が期待できる人工的な化合物を世界で初めて確認したことを、17日付の米国アレルギー専門誌に発表した。内服薬の開発に道を開くという。
皮膚表面の角質層が荒れるなどバリアー機能が低下すると、ダニやハウスダストなどの異物が侵入。アレルギー反応で炎症が起き、アトピー性皮膚炎を発症する。塗り薬のステロイド剤は、炎症を抑える効果がある。
近年、角質の基になるたんぱく質「フィラグリン」を作る遺伝子に異常があると、アトピーになりやすいことが分かってきた。アトピー患者の約30%に遺伝子異常があるという。また、遺伝子異常がなくても、アトピー患者にはフィラグリンが少ないとされる。
研究グループは1000種類以上の物質を、培養したヒトの表皮細胞に与える実験を繰り返した結果、「JTC801」という有機化合物がフィラグリン生成を増強させることを発見した。アトピー性皮膚炎になる体質のマウスを使い、症状が出始める生後6週間目以降、この物質を毎日飲ませるグループと、飲ませないグループを比較。飲むグループの症状が抑えられたことが確認できた。
椛島准教授は「起きてしまった火事(炎症)を消すのがステロイドだとすれば、フィラグリンは火事を未然に防ぐ効果がある。副作用の心配も少ない。10年後をめどに実用化を目指す」と話している。
(2013年9月17日 毎日新聞)