生活習慣病の一つ、「糖尿病」の新しい作用機序を持つ薬がまもなく国内でも承認される見通しとなりましたのでご紹介致します。
まず、糖尿病とは、そもそもどんな病気なのでしょうか。
もうすでにご存知の方も多いと思いますが、簡単におさらいしておきます。糖尿病は、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞から分泌されるホルモン(インスリン)の作用の異常や分泌低下などによって血糖値が高くなる状態が継続している病態のことです。
その主な原因は、「食べすぎ」、「ストレス」、「お酒の飲みすぎ」、「運動不足」など、まさに「生活習慣病」の代表格といえる病気です。そのタイプは、Ⅰ型とⅡ型があります。
Ⅰ型は、自己免疫疾患やウィルス感染などが原因でインスリンを作り出す膵臓のβ細胞が破壊されてインスリンの分泌がほぼ「0」の状態になってしまうタイプです。
Ⅱ型は、インスリンの分泌量の低下や、細胞のインスリンの感受性が低下したタイプです。
ほとんどの糖尿病患者さんはⅡ型タイプの方になりますので、ここではⅡ型糖尿病の治療薬についてお話します。
さて、糖尿病治療の内服薬として、最も古くから使用されているものは、膵臓からインスリンの分泌を促進させる「スルホニル尿素系薬」(商品名;ダオニール、オイグルコン、アマリールなど)です。
次に、小腸から糖の吸収を抑制する「αグルコシダーゼ阻害剤」(商品名;ベイスン、グルコバイなど)や「インスリン抵抗性改善薬」(商品名;メトグルコなど)が開発されました。
その後、しばらくの期間、新しい作用機序の医薬品は登場していませんでしたが、今から4~5年前に、約10年ぶりに新薬が登場しました。これは「インクレチン」と呼ばれる消化管ホルモンの血糖コントロールを利用した血糖降下薬です。詳細については平成21年12月号のくすりの話でお伝えしていますので割愛させて頂きますが、このタイプの医薬品は各メーカーから開発ラッシュが続いています。
しかし、この度さらに新しい作用機序をもつ糖尿病治療薬(SGLT2阻害薬)の開発が行われており、まもなく国内でも承認される見通しです。
SLGT2阻害薬は、インスリンの作用に関係なく血糖値を下げることができ、低血糖も起こりにくいのも特徴です。
通常、腎臓では1日に約180リットルの原尿が作られますが、糖は人間にとって重要なエネルギー源となりますので、原尿の糖のほとんどはSGLTという糖の輸送をつかさどる膜たんぱく質によって体内に再吸収されていきます。
糖尿病の患者さんは、血糖値が高くなっているため、体内に再吸収できる容量をオーバーしてしまっていますので尿に糖が出てしまいます。特にSGLT2の発現が亢進してますます血糖値が高くなっています。
そこでSGLT2を阻害することによって糖の再吸収を抑制できれば血糖値を下げることができるのではないかという発想で開発されている医薬品です。
すでに世界中でこの作用機序を持つ医薬品の大規模な臨床試験が行われていますので、日本でもまもなく発売されるものと思われます。
ただ、副作用としてSGLT2を阻害することによって尿の糖濃度が高くなるため、菌が繁殖しやすくなることにより尿路感染症などが報告されています。
糖尿病患者さんの数は年々増加していますので、新しい機序の医薬品の誕生の期待度も高いといえます。