染色体の末端にあり、その長短が老化の尺度として働くDNA部分を制御する仕組みが、関西学院大の田中克典教授らのグループにより新たに解明された。老化を防ぐ研究や、抗がん剤の開発につながる研究成果で、米国科学アカデミー紀要に掲載される。
動物の細胞には分裂回数に限りがあり、寿命がある。これには染色体の末端にある「テロメア」と呼ばれる部分が深く関係しており、細胞分裂の度にこの部分が少しずつ失われていく。通常は長さが半分程度になると分裂を停止するが、多くのがん細胞では「テロメラーゼ」というテロメアDNAを維持する酵素が働いてテロメアが失われず、決められた回数が過ぎても細胞分裂が続く「分裂回数の監視を逃れた状態」にある。
そこで田中教授の研究グループは、老化防止や抗がん剤開発のため、酵母菌を用いてテロメアの長さを一定に保つ仕組みの研究を行ってきた。今回、不用たんぱく質を選んで分解する目印役になるたんぱく質(ユビキチン)に似たたんぱく質(SUMO)が、テロメアが長くなり過ぎないように働きかけていることなどを解明したという。
田中教授は「今回の発見は酵母菌での現象であるが、テロメアは人間の細胞と酵母菌で驚くほど似ている。新たな抗がん剤の開発や老化を防ぐ研究へと発展していくことを期待している」と話している。
(2014年4月8日 毎日新聞)