妊娠中の乳がん患者への抗がん剤治療について、聖路加国際病院(東京都)は11日、大阪市で開かれた日本乳癌がん学会学術総会で、胎児への大きな影響は見られなかったとする調査結果を発表した。
同病院は1999年11月から2013年11月までに、妊娠中に乳がんと診断された59人を対象に、治療法ごとに患者や胎児の経過を追跡調査した。そのうち34人で、妊娠4か月(妊娠14週)以降に抗がん剤治療を実施した。
その結果、妊娠中には切迫早産などが計7件、また、分娩時に胎児の心拍低下など計4件で緊急帝王切開になるなどの合併症があった。しかし、その割合は通常の妊娠と変わらなかった。胎児に重い合併症や発育の遅れは見られなかった。今後、長期間、子供の発育状況を追跡調査する。
同学会の診療指針は、胎児の器官形成期の妊娠4か月までは胎児死亡や先天異常の危険性が高まるため、抗がん剤治療はすべきでないとしているが、5か月以降は「長期の安全性は確立していないものの、検討してもよい」としている。しかし、国内では、中絶を選んだり、出産まで治療を延期して病気が進行したりするケースが多い。
山内英子・同病院ブレストセンター長は「選択肢としてあり得るので、十分説明を受け、家族で話し合ってほしい。病院側も産科や小児科との協力体制が不可欠。不安を感じる患者や家族への長期的な支援も必要だ」と話している。
(2014年7月12日 読売新聞)