農業生物資源研究所(生物研、茨城県つくば市)と東京大医学部付属病院の研究チームは、豚のコラーゲンから人の角膜組織などを再生させる新素材を開発したと発表した。実用化すれば、この素材から大量培養で角膜組織を作ることもできるという。角膜内皮の病変で視力が低下し、年間5千人が発症するとされる水疱性(すいほうせい)角膜症の患者など、角膜移植が必要な人には朗報といえそうだ。
研究チームが開発した「アテロコラーゲンビトリゲル膜」は厚さ約20ミクロンの高密度コラーゲン線維膜で、水分やタンパク質を通す半球面状の素材。この素材を使うことで今後、1人の細胞を基に角膜組織の大量培養が可能になるという。
人の黒目の部分に当たる角膜は外側から上皮、実質、内皮の3つの組織で構成される。内皮細胞は再生能力がなく、加齢や白内障手術などで細胞数が極端に減ると視力が低下する。視力回復には角膜移植が必要だとしている。今回、開発した素材をウサギの目に移植したところ、炎症などの異常はみられなかった。
角膜移植はドナー(提供者)からの角膜提供に頼っているが、移植を望む患者は多く、国内では年間約700人が移植待ちの状態。また移植が必要な患者の約4割が水疱性角膜症が原因とみられる。
東大病院では10年以内の実用化も可能という。生物研の竹沢俊明上級研究員は「多くの患者に角膜内皮の移植実現につなげたい」と話している。
(2014年9月21日 産経新聞)