胃がんの発症につながるとされるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)について、世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関の作業部会は、全世界の胃がんの約8割はピロリ菌の慢性的な感染が原因とする報告書をまとめた。
ピロリ菌の除菌で胃がん発生の危険性が30~40%減る可能性があることから、各国がピロリ菌を考慮した胃がん対策をとるよう勧めている。
報告書では、ピロリ菌は全胃がんの78%、特に日本人に多い、噴門ふんもん部(胃と食道のつなぎ目の部分)以外の胃がんでは89%がピロリ菌が原因と推定されるとした。除菌の効果は、まだ十分なデータがないものの、これまでの研究結果の解析では胃がんの発生を30~40%減少させ、1人が1年にかかる医療費も削減する効果が出ているとした。
ピロリ菌対策として、日本では昨年から内視鏡で慢性胃炎と診断された人に除菌治療を保険適用で行うなど、各国の取り組みを紹介。一方で、除菌によって抗生物質の耐性菌が増える可能性なども示し、「各国が患者数や医療優先度、経済効果の分析をした上で、ピロリ菌の検査と治療戦略を地域ごとに模索することを勧める」と結論づけた。
胃がんは日本人が最も多くかかるがんで、死亡者数も肺がんに次ぎ2位。世界では年間約100万人が発症する。
(2014年9月24日 読売新聞)