交通事故やスポーツの事故などで欠損した膝の軟骨を治すために、磁石を使って細胞を移植する臨床研究を、広島大の越智光夫教授(整形外科)らが始めた。
細胞を磁石で的確に患部に集め、従来の治療法より、安定した軟骨を効率的に作ることができると期待される。19日から横浜市で開かれる日本再生医療学会で、臨床研究の概要を発表する。
臨床研究では、腰の骨から骨髄液を注射器で採り、軟骨のもとになる幹細胞を増やし、鉄粉を中に封じ込める。患部の近くに磁石を置き、幹細胞を患部に引きつけながら注入する。3年間で5人の患者に実施、安全性や有効性を確かめる。今年2月に、1人目の10歳代の女性に移植を実施。今月下旬も50歳代の女性への移植を予定する。
従来の軟骨治療は、患部に隣接する骨を傷つけ、軟骨のもとになる幹細胞が自然に集まるのを促す方法が主流だった。しかし、できた軟骨が数年たつと損傷する課題があった。今回の研究では従来法と合わせ外から幹細胞を補充し、磁石を使って患部に定着させる。
膝の細胞を培養した組織を貼り付ける、別の治療法と比べても、膝周辺の傷が小さくて済むという。
研究チームの亀井直輔同大助教は「研究が成功すれば、企業と組んで製品化を目指したい」と話す。
(2015年3月16日 読売新聞)