睡眠薬と言えば、かつてはテレビのドラマなどで自殺に使われていたりすることなどから、「怖い薬」というイメージを持たれている方が多いかも知れませんが、最近の薬は依存性(癖になること)が少なく、間違ってたくさん服用しても呼吸中枢に影響を及ぼすことがないため、安全に使用できるようになっていますので、過度に怖がる必要はありません。
しかし、安易に服用を続けることもよくありませんので、睡眠薬は適切に使用することが大切です。
高齢になれば「睡眠を持続する力」が低下するのは当たり前のことですので、まず患者自身がそのことを理解し、いかに日中眠くて生活に支障が出ないようにするかなどのQOL(生活の質)を高めるかというところに意識を傾けなければなりません。
国内において睡眠薬を長期服用している方は、なんと成人の20人に1人と言われていますが、睡眠薬の長期服用に不安を感じている方が多く、実に長期服用者の中の約45%は自分の判断で薬を止めようとして失敗しているというデータもあります。
睡眠薬を止められなくなる一番の問題は、「眠れない」という患者の訴えに対して医師が漠然と長期投薬してしまうことや患者が自分勝手にいきなり薬をやめようとしても減量や休薬の仕方が間違っているためにやめられないことが多いようです。
そこで、平成25年6月には「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン~出口を見据えた不眠医療マニュアル~」が公開されました。このマニュアルによれば、漠然と長期服用することを戒め、不眠症は数ヶ月間放置すれば慢性化することがわかっていますので、発症早期に専門医の治療を行うことをすすめています。
即ち、睡眠薬の服用により眠れるようになった早期の段階であれば、減薬や休薬は可能と言うことです。
また、不眠治療のゴールは「朝までぐっすり眠れること」ではなく「日中のQOLを高めること」(日中に眠くて活動に支障をきたすことがないようにすること)にあるということを患者自身が理解することが大切です。
もし、睡眠薬を止めたい場合は、自分の判断で勝手に調節するのはよくありませんので、医師とよく相談して、薬の種類を変えてもらったり、医師の指示のもと少量ずつ減量しながら様子を見るのも良いでしょう。