全身の筋肉が急速に衰えて呼吸などが難しくなる難病ALS(筋萎縮性側索そくさく硬化症)の患者に、ビタミンB12の一種「メコバラミン」を投与したところ、患者の一部で1年半以上の延命効果があったとする臨床試験の結果を、徳島大などのグループがまとめた。
メコバラミンは、手足のしびれに対する薬として、既に医療現場で広く使われている。日本神経学会などは厚生労働相に対し、メコバラミンをALS治療薬としても使えるよう、早期の適用拡大を求める要望書を提出した。従来の治療薬では、延命効果は3か月程度とされていた。
臨床試験は、メコバラミンを開発したエーザイが主導し、全国の51医療機関が参加した。2007年から約7年半にわたり、ALS患者約370人を対象に、メコバラミンの投与量に差をつけて効果を調べた。
発症から1年以内に治療を開始した場合、死亡するか人工呼吸器が必要になるまでの期間は、投与を受けなかった場合の570日と比べ、600日以上長い1197日だった。
一方、発症後1年を過ぎてから治療を始めた患者では、延命効果はなかった。効果に差が出た理由は、はっきりしないという。
ALSは原因不明で、根治療法は見つかっていない。臨床試験を行った梶龍児・徳島大教授(神経内科)は「従来にない延命効果が示された」と説明。日本神経学会代表理事の高橋良輔・京都大教授も「副作用は少なく、国は早く適用拡大を認めてほしい」と話している。試験結果は新潟市で開かれる同学会で、21日発表される。
(2015年5月20日 読売新聞)