アトピー性皮膚炎による肌の慢性的なかゆみは、脊椎(せきつい)にある特定の細胞が活性化して引き起こされていることを九州大大学院の研究グループが突き止め、20日付の米医学誌電子版に発表した。神経系の観点からかゆみが増幅するメカニズムを明らかにしたのは初めて。治療薬の開発に役立てたい考えだ。新薬の実用化には10~20年ほどかかる見通しとしている。
アトピー性皮膚炎は国民の1割が患っているとの厚生労働省の報告書がある。治療法は皮膚の炎症を抑えるのが主流で、かゆみを直接鎮める薬はないという。
かゆみがあると患部を引っかくことで肌が損傷して症状が悪化するため、治療の障害となっている。
このかゆみを増幅させる細胞は「アストロサイト」と呼ばれる。皮膚炎を自然発症したマウスで実験した結果、症状が悪化した時には脊椎の中で、「STAT3」というたんぱく質が働いてアストロサイトが活性化していたことが分かった。
このSTAT3の働きを抑制する試薬を投与すると、マウスが自らを引っかく回数が2分の1以下に減ったという。
また活性化したアストロサイトが作り出す「リポカリン2」というたんぱく質が、かゆみの神経伝達を強めていることも分かった。
(2015年7月21日 毎日新聞)