今回は、がん患者と心臓病との関係についてお話します。
がん患者は、自分では気づかないうちに心臓への損傷を受けている可能性があることをオーストラリアで行われた研究により明らかになりました。
この研究は、555人の患者を対象に実施されたもので、研究結果は医学雑誌の「Heart」に掲載されています。
米国の心臓病学会に所属する医師によれば、がん化学療法が心臓に毒性作用をもたらすこともあるため、近年では心臓専門医とがん専門医の壁が取り払われ、がん専門医が化学療法を実施する前に、心臓専門医が心臓のチェックを行うことも始まっているそうです。
しかし、今回の研究により、化学療法を受ける前から心臓疾患マーカーが高くなっていて、がんの進行とともにさらに上昇することが分かりました。
今回の研究では、トロポニンという心筋梗塞マーカーとしても既に利用されている物質を測定していますが、2年間の追跡調査で、がんの重症度とともに数値が上昇していることが分かりました。
中には、通常の100倍まで上昇している患者もあったようですが、がん患者の死亡リスクと心臓疾患マーカーの数値の関係に有意な関連が認められたということです。
また、体ががんを攻撃するために、炎症反応が起こり、間接的に心臓にもダメージを与えていることも考えられます。
こうした背景から、がんと診断された患者は、心臓病で「突然命を落とす」ことのないように、こまめに心臓疾患マーカー(トロポニンなど)を調べることも必要になるかも知れません。
がん患者と心臓病との関係については、まだまだ研究段階でもあり、がん患者全ての方が心臓病に進行するわけではありませんので、がん患者は過度な心配はされませんように念のため申し副えます。