腸内細菌のうち体に有害な「悪玉菌」の増殖を抑え、「善玉菌」には作用しない物質をマウスの体内から発見したと、奈良先端科学技術大学院大などのチームが発表した。
潰瘍性大腸炎など様々な病気の治療や予防に役立つ可能性があるという。
腸内には多様な細菌が存在しているが、病気や加齢で体力が落ちると、悪玉菌が増えて腸が炎症を起こす。慢性化すると、腸の病気のほか、高脂血症や認知症など、様々な病気につながると考えられている。
同大学の 新蔵 礼子教授(応用免疫学)らは、マウスの腸の粘膜から、大腸菌や 緑膿 菌など様々な悪玉菌にくっついて増殖を抑える、「W27」というたんぱく質(抗体)を見つけた。腸炎のマウスにW27を飲ませると症状が良くなった。
W27が悪玉菌を見分ける「目印」は、乳酸菌やビフィズス菌など健康に良い働きをする細菌にはない。腸炎の治療に使われる抗菌薬などには善玉菌も死滅させるものがあり、新蔵教授は「W27は悪玉菌だけを抑える薬になる可能性がある。10年以内に新薬として実用化を目指したい」と話している。
(2016年7月6日 読売新聞)