熊本大大学院生命科学研究部の尾池雄一教授(分子医学)の研究グループは、心筋細胞から過剰に分泌されたたんぱく質の一種が心不全を発症させることを発見した。心不全の新たな治療法の開発につながる可能性があり28日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ電子版に掲載された。
問題のたんぱく質は「アンジオポエチン様タンパク質2」。本来は組織の正常な働きを助ける作用があるが、心筋細胞内で過剰に分泌されると、細胞のカルシウム濃度の調節やエネルギーを生成する力を弱める。その結果、心筋の収縮低下を招き、心不全を引き起こすという。また、高血圧や加齢が過剰分泌の一因となることも突き止めた。
研究グループは、このたんぱく質の生成を抑えるウイルスを投与して、マウスの心不全進行を抑える実験にも成功。尾池教授は「将来は人への応用を考えている。3~5年以内に臨床試験に入りたい」と語った。
(2016年9月29日 毎日新聞)