治りにくいがんとして知られる「スキルス胃がん」の症状が進む原因となるたんぱく質をマウスの実験で特定したと、大阪市立大の八代正和准教授(腫瘍外科学)らのチームが米病理学会誌の電子版に論文を発表した。治療薬の開発につながる可能性があるという。
八代准教授によると、胃がんは多くの場合、胃の粘膜の上にでき、内視鏡などで検査すれば早期発見できる可能性が高い。しかし、スキルス胃がんは、粘膜の下に隠れるように広がり、進行も早いため、早期発見が難しい。年間1万人以上が発症しているとされ、死亡率も高い。
チームは、スキルス胃がんの細胞をマウスの胃に移植して観察。その結果、「CXCL1」と呼ばれるたんぱく質が原因となり、がんの周囲に血液中の正常な細胞が引き寄せられ、別の細胞に変化することが判明した。この別の細胞から出る物質が、がんを増殖させるという。
CXCL1の働きを弱める試薬をマウスに投与すると、がん細胞の増殖や転移の速度が遅くなり、生存期間が延びた。このたんぱく質は人にもあり、八代准教授は「製薬会社などと連携し、できるだけ早く臨床試験を始めたい」と話す。
(2016年10月17日 読売新聞)