2015年3月号のくすりの話で、病院でも処方されている胃薬(成分名:テプレノン)が認知症に効果が
期待できるかもしれないというお話を致しました。
その作用についておさらいすると、
「認知症の中でも代表的なアルツハイマー型認知症が発病する原因の一つに、脳内にアミロイドβなどの異常
な絡まり方をしたタンパク質が蓄積するためと言われています。
アミロイドβなどの絡まったタンパク質をほどく作用のある物質がHSP(ヒートショックプロテイン)で、
体内でHSPを増やす物質のひとつに、テプレノンがある」
という事をお伝えしました。
HSP(ヒートショックプロテイン)は、体に熱や紫外線などによるストレスが加わると、体内で作り出されて細胞を保護・修復するタンパク質として最近注目されている物質で、NHKの情報番組「ためしてガッテン」でも紹介されています。
最近、岡山理科大学の研究グループにより、テプレノンがHSPを体内で増やすことで「抗うつ作用」を発揮する可能性が発表されました。
研究グループによると、縄張り意識が強い大きなマウスがいる飼育箱に、小さいマウスを入れて攻撃されることによりストレスがかかると、小さいマウスはうつ病のような状態になりますが、その時の脳内のHSP発現量は大幅に低下し、テプレノンを投与すると、HSPが増加し、抗うつ効果がある「神経栄養因子」の発現量が増えることが確認されたとのことです。
また、ヒトへの効果を確認するため、米国食品医薬品局(FDA)が公開するデータベースを分析したところ、インターフェロン投与で発症する副作用の「うつ病」が、テプレノンで抑えられていたことが判明しました。
研究グループによると、既存の抗うつ薬は重い副作用を伴うものもあり、
テプレノンのうつ症状改善に対する効果をヒトで検証し、2~3年以内に
実用化を目指したいとしています。
このように、HSPを体内で増やす事は、健康維持の上でも有用と思われますが、最近では、抗ストレス、睡眠改善、認知症予防・改善対策としてHSPを体内で増やすサプリメントも注目されています。
※現時点では、テプレノン(一般名)がアルツハイマー型認知症及びうつ病の医薬品になっているわけではありません。その効果については未検証ですので、ご理解ください。