埼玉大理学部の坂井貴文教授(分子内分泌学)らのグループは21日、細胞に作用して食欲を抑える物質を、人工的に効率良く作り出すことに成功したと発表した。
物質は、アミノ酸がつながって出来ている「ペプチド」の一種で、この手法により、肥満を解消する薬の開発などが期待できるという。米国科学アカデミー紀要の電子版で現地時間の20日に公開された。
坂井教授らはペプチドのうち、胃から分泌される「グレリン」に注目。これは、細胞膜の「受容体」と呼ばれる物質と結合することで、脳に食欲を増進させる信号を送る機能がある。
坂井教授らは、グレリンの代わりに別のペプチドを結合させることで、グレリンがもたらす食欲増進の効果を抑えられるのでは、と考えた。
そのペプチドを選別するために、坂井教授らは、同大大学院理工学研究科の西垣功一教授(進化分子工学)らのグループが開発した「cDNAディスプレイ法」という技術を応用。グレリンの受容体に結合する可能性がある256億種類の人工ペプチドを作製し、グレリンの受容体に振りかけた。
この作業を繰り返し、強力に結合した数種のペプチドを選び出した。マウスを使った実験で、そのうち1種類のペプチドで、食欲を抑える効果が確認された。
坂井教授によると、この技術を使って、グレリンの機能を抑制するペプチドを作製したのは、世界初という。
坂井教授は「この手法を用いれば、食欲だけでなく、いろいろな機能を促進または抑制するペプチドを効率的に作り出すことができ、分子標的薬の開発に役立つ」と話している。
2012.6.22 読売新聞
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