米国ジョンズ・ホプキンス大学のCynthiaSears教授らによって、一部の抗菌薬が結腸がんリスクを上昇させたという研究結果が論文掲載されました。
この研究では、英国の臨床試験研究データベースから抽出した、1989~2012年の間に大腸がんと診断された患者28,980人と、年齢および性別をマッチさせた非大腸がん患者137,077人を対象として行われました。
Sears教授らは、研究登録時から大腸がんと診断される1年前までに患者が処方された経口抗菌薬と大腸がんリスクとの関連性を検討しました。
その結果、経口抗菌薬投与以外のリスクである、肥満や喫煙などのリスク因子を考慮しても、抗菌薬を長期で
処方された患者の結腸癌リスクは17%高かったとのことです。
この理由として考えられることは、「腸内細菌叢」のバランスの崩れによるものが考えられます。
最近、腸内細菌叢のバランスの崩れと健康との関わりについては、かなり詳しく知られるようになってきましたが、それを裏付ける研究結果のひとつとも言えそうです。
腸内細菌叢のバランスの崩れと健康との関わりについては、大腸がんの他、認知症や関節リウマチなど、一見腸と全く関係がないと思われそうな疾患まで関与していることもわかっています。
ただ、この研究に携わっていない別の研究者からは、「この研究では患者の食生活や運動といった生活習慣に
ついても大腸がんリスクとして大いに関与しているにも関わらず、一切情報がない」ことを指摘しています。
確かに、この研究だけで抗菌薬の長期使用は、大腸がんリスクを増加させると結論づけることはできませんが、少なくとも既述したとおり、腸内細菌叢と健康とのかかわりがあることは、間違いない事実であり、さらには抗菌薬の長期使用は耐性菌を誘発することなどを考慮すれば、安易な抗菌薬の長期使用は差し控えたほうが好ましいと考えらます。
いずれにしても、大腸がんリスクを低減させるためには、適度な運動、正常体重の維持、禁煙、節酒、健康的な食生活を心がけるなど、従来から知られているがん予防の方法を実践することが最も大切なことと思います。