妊婦さんがお薬を使用するときは、胎児への影響が気になるのは母親として当然のことと思います。ましてや、初めての妊娠や、妊娠に気づいていなかったときにお薬を服用したときには、なおさら気になることでしょう。
そこで今回は、妊婦さんからよく頂く質問について、Q&A形式でご紹介いたします。
Q1; インフルエンザと診断されましたが、抗インフルエンザ薬は服用しても大丈夫ですか?
A; 妊婦さんがインフルエンザに感染すれば、一般的には気管支炎や肺炎の合併の恐れもあり、重症化しやすいと言われていますので、発症後48時間以内に速やかに服用してください。もちろん、予防接種をはじめ、うがい・手洗い・外出時のマスク着用・睡眠・お部屋の換気と加湿など、予防対策をしっかりと行うことが大切です。
Q2; 腰痛で湿布薬をもらいましたが、胎児への影響はありませんか?
A; 湿布薬などの外用薬は、皮膚から吸収されて有効成分が血液中に移行し、さらに胎盤を介して胎児の血中に移行する量はごくわずかと考えられるため、通常量であれば胎児への影響はまずないと考えられます。
一方で、ケトプロフェン配合の湿布薬は、血中に移行しやすいため、妊娠後期に使用した例で胎児動脈管収縮が報告されているため、ケトプロフェン配合の湿布薬は「妊娠後期女性には使用しないこと」になっています。しかし、これも使用期間や使用量の問題がありますので、大量に、あるいは漠然と長期間で使用しない限り、過度に心配されなくても良いと考えられます。
Q3; アトピー性皮膚炎でステロイド外用薬を使用していますが、大丈夫ですか?
A; 添付文書には「妊娠または妊娠している可能性のある婦人に対しては、大量または長期にわたる広範囲な使用は避けること」と記載されていますが、臨床的に使用する一般的な使用量や使用方法であれば体内への成分の吸収量は少なく胎児への影響はありません。
もっともよくないのは、自己判断で使用を中止してしまうことで、症状を悪化させてしまうことです。
自己判断で使用を中止することなく、担当医師の指示に従って正しく使用してください。
Q4; 便秘がひどくて、妊娠しているのに気づかずに家にあったセンノシドを服用したが大丈夫でしょうか?
A; 妊娠期の便秘の大部分は、大腸の動きが悪くなっておこる「機能性便秘」と言われていますので、まずは運動と食事に気を配ることが大切です。それでも効果が見られない場合は、お薬を使用することになりますが第一選択は「酸化マグネシウム」です。それでも効果が見られない場合は、ピコスルファートナトリウムやセンノシドなどを使用することがありますが、センノシドなどは動物実験では子宮収縮をおこすことが知られていますので、添付文書上は妊婦さんには「原則禁忌」(原則として使用しないこと)となっています。しかし、ヒトが服用した場合に流産のリスクが増加したという報告はございませんので、「飲んで
しまった」という場合であっても、過度に心配する必要はございません。
その他、点鼻薬やレントゲン検査によるX線被爆などについても、全く心配はございません。
いずれにしても過度に心配することは避けて、気になることがあれば気軽に主治医にご相談することと、妊娠が確認されていなくてもその可能性のある場合は、あらかじめ受診時に医師に伝えておくことが大切と思われます。