現在、脂質異常症に対する薬物療法は、若年層から高齢者までスタチン系の薬の使用が主流になっていますが、特に高齢者ではスタチン系の薬の副作用発現などの問題(例えば、糖尿病発症の増加など)も考慮しなければなりません。
この度、米国ハーバード大学大学院のBaris Gencer氏らは、75歳以上の患者においても、75歳未満の患者と同様に「スタチン系薬」と「スタチン系以外の薬」の双方の脂質低下薬による治療は臨床的に有効であるという研究結果を科学雑誌Lancetのオンライン版(2020年11月10日号)で報告しました。
この度の研究では、高齢者におけるLDL-コレステロール低下療法のエビデンスを要約する目的で実施されたもので、高齢患者に対してスタチン系薬治療とスタチン系以外の薬での脂質低下療法のいずれもが主要血管イベント(例えば狭心症、脳梗塞など)を有意に抑制したという結果を報告しており、論文の著者は、「これらの結果は、高齢患者におけるスタチン系以外の薬物療法を含む脂質低下療法の使用に関するガイドラインの推奨を強化するものである」としています。
即ち、高齢者の脂質低下療法は、現在スタチン系の薬物療法が主流になっていますが、スタチン系以外の薬物療法を選択することも可能と解釈できます。
しかし一方で、入院や施設への入所やがんなどの発症をきっかけに75歳以上の高齢者がスタチン系の薬を中止した場合、継続して使用している方と比べて心血管イベントによる入院リスクが33%も増加したとのフランスの病院で行われた研究結果も報告されていることから、今後のより詳細な研究が求められます。
いずれにしても、脂質異常症の薬物治療は、高齢者においても若年層と同様に大切であることは間違いないと考えられますので、日常からしっかりと定期的な検査で自分の健康状態をチェックする習慣を心がけていくことをお勧めします。