昨年からのコロナ禍の影響でこれまでとは違った生活習慣となり、ストレスをより多く感じている方も多いのではないでしょうか。ストレスを解消するための外出や人とのコミュニケーションもこれまでと同じようにはできなくなりました。
そこで、自宅で人数や環境にあまり左右されることなく楽しめる音楽によるストレスケアはいかがでしょうか。今回は、音楽の癒しの力をご紹介します。
★音楽が心と体に及ぼす、さまざまな影響
好きな音楽を聴いて元気をもらったり、感情が揺さぶられたりした経験は、多くの人がお持ちなのではないでしょうか。
音楽が心身に及ぼす影響は複合的で、大きく3つの側面に分けられます。
(1)生理的・身体的なレベルの直接的な影響
耳から入った音楽は、脳へと伝わり、全身に影響を及ぼします。自律神経系に作用して、心拍や血圧が変化し、興奮や鎮静、リラクゼーションなどの効果がもたらされます。同時に、心の状態にも影響を与え、感情、知覚、認知を活性化させることが分かっています。
(2)間接的な影響
音楽そのものではなく、思い起こされる記憶や感情も影響を与えます。例えば、子供時代や青春時代に流行した歌を聴くことで、当時の記憶がよみがえり、楽しかった思い出に浸るうちに、心が明るくなることがあります。
(3)人々をつなぐ社会的側面
他人とともに音楽を楽しむことで、人のつながりが生まれることもあります。例えば、誰かと一緒に歌ったり、音楽を共有をしたりすることで、親密感や仲間意識が芽生えることもあります。
★音楽でストレスを緩和するためのヒント
音楽は人それぞれ同じ曲であっても受け止め方が異なり、ストレスケアにつながる場合もあれば、逆にストレスに感じてしまう場合もあります。例えば、テンポやリズムのゆったりした音楽に鎮静効果があるとされていても、激しいリズムでテンポの速いパンクロックなどを好む人にとっては退屈なだけかもしれません。
音楽が人に及ぼす影響については、生理的・身体的レベルで導きだせる基本的な特徴や傾向は分かっているものの、「誰にでも同じように効果的な音楽」というものが存在するわけではありません。個人の趣味嗜好や文化差、社会的背景なども影響するため、因果関係の判断や影響の特定は難しく、さまざまな観点から慎重に研究が進められています。
具体的な状況に合わせて選ぶと良いとされる音楽をいくつかご紹介しましょう。
●イライラした気分を発散したい時
激しめの曲や体を動かしたくなるテンポの速い曲
●気持ちが落ち込んでいる時
ゆったりと穏やかな音楽(気持ちが落ち着いてきたら少しずつテンポを速く)
※ただし、あまり暗い音楽を聴き続けると、さらにつらい気持ちが喚起される恐れがあるので注意が必要です
●人付き合いに疲れた時や集中したい時
できるだけリズムや響きがシンプルな音楽
●人恋しい・寂しさを感じる場合
感情的な表現が盛り込まれた壮大な曲
さらに、懐かしさを感じる曲は、喜び、幸せ、満足、リラックスなどポジティブな感情を呼び起こしやすいです。以前好きだった音楽を聴いて、ストレスフルな現実をいっとき忘れるのも良いかもしれません。
音楽を効果的に用いることで身体的、精神的な痛みや辛さを和らげる「音楽療法」は、病院や介護施設などでも活用されています。アメリカでは音楽療法士が在籍し、手術や大変な治療などの大きなストレスを感じる患者さんに付き添って、音楽を用いてリラックスさせたり、痛みを和らげる取り組みもされています。
コロナ禍では特にストレスケアが必要とされています。身近な音楽、懐かしい音楽を楽しんで、ストレスケアに役立ててみてはいかがでしょうか。