皆様は「免疫」とか「免疫力」という言葉を、耳にしたことがあると思います。身近なところでは、コロナウイルス感染拡大防止にむけても身体の免疫力を高めることが大切ということはよく知られていますね。
しかし、実は専門の研究者であっても「免疫」のメカニズムについてわかっていないことがまだまだあるというのが現状です。
本日は、免疫学の中でも「サイトカイン」について、その一部をご紹介いたします。
さて、「サイトカインっていったい何だ?」ということですが、免疫を少しでも勉強されている方なら言葉としては聞いたことはあるかも知れません。
サイトカインは、白血球などから分泌されるたんぱく質の一種で、「インターフェロン」といえばわかる方も多いかも知れませんが、インターフェロンやインターロイキン、TNF(腫瘍壊死因子)などの物質で、サイトカインと一言で言っても、実に多くの種類が存在し、インターロイキンだけでも30種類以上知られています。
これらのたんぱく質が、体内で情報の伝達に関与し、免疫や炎症に絶妙なバランスで作用しています。
例えば、アトピー性皮膚炎の治療を例にとると、現在ではインターロイキン-4(IL-4)とインターロイキン-13(IL-13)をピンポイントで抑制する皮下注射での治療や、IL-4,IL-13、IL-31などのサイトカインの伝達にかかわるヤヌスキナーゼ阻害作用を有する塗り薬など様々な医薬品が開発され、これらは皮膚のバリア機能の低下を防いだり、かゆみを抑えたりする作用を有しています。
アトピー性皮膚炎の患者は、国内では約51万人にも及ぶと言われており、成人になってから発症する例も多く見られていることから、これらの研究の進歩は朗報と言えます。
ところで、風邪をひいたときに眠くなるという経験は誰もがあると思いますが、実はこれも「サイトカイン」が関与しているのです。
風邪の原因となる細菌やウイルスの感染に対抗するため、炎症性のサイトカイン(例えばTNF-αやIL-1など)を産生し熱や痛みが生じます。即ち、風邪をひいて熱が出るという事は、身体が細菌やウイルスと闘っている証拠ともいえますが、そのサイトカインの作用で眠くなることもわかってきたのはまだ数年前のことです。
このように現在医学でもわかっていないことがまだまだ多いのが現状で、今後の研究の進展に大いに期待したいところです。